Lost & Haunted

  • ジャンル:釣行記
あっちゅう間に、梅雨が明け。

2ヶ月も夏が続く。 


元来暑さには弱い方だったけど、
昨春頃から陽射しや熱で肌に痛みが出る
という厄介なヴァンパイア体質に。 


UVカットの服越しでも、日差しで肌がビリビリと痛む。 

暑さで流れる汗が沁みる。 

服との摩擦でも痛む。 

潮風が顔にあたるだけで、切り裂かれるように痛んだり、 

背中が痛くて車のシートに寄りかかれなかったり。 


・・・釣り人なのに、これってどうよ!? 

情けないくて悔し泣きの毎日。 


盛夏の頃には。 

室内で何もしていなくても、常に痛みがあって 
動いて汗をかいたり、日差しを浴びたりすると 
それがさらに悪化する。 

汗を流すシャワーも、水に近い位ぬるい温度でないと 
ピリピリ痛むほど。 

いくつもの病院で精密検査を受けても、 
原因はさっぱり分からず、恐らく神経系の問題だろうと言われるだけ。 


とにかく何をするのも苦痛で、文字通り泣き暮らす毎日。 

釣りを始めてから、2ヶ月も釣りしなかったのは初めて。 

痛み自体も辛かったけど、釣りに行けないストレスったら。 



それに比べたら、今年は少し楽、なのかもしれない。
 

普通の人が見たら過剰防衛と思われる装備で外に出ているし。

痛みを感じた時に、いかに素早く対処するかというのにも大分慣れた。
 
痛みを抑える新薬も(副作用はともかくとして)少しは効いているようだし。
 
前向きな材料はある。
 
だから今年は大丈夫。梅雨があける頃までは、そう思っていた。
 

でも、痛みの記憶って思ったよりも根深いものだと気付いた。
 
先の見えない悩みに苦しみもがき、
呼応するように強くなる痛みに耐えていたあの日々。

それが、暑さとともに蘇って、亡霊のように追い立てる。
 
あらゆる刺激が怖くて外出できず、引き篭もって痛みに耐える暮らし。

そんな私の窮状を目の当たりにせざるを得なかった元相方の苛立ち。

せめて二人が発散できるのが釣りの場であったのに、それさえも叶わず
まさに負のスパイラルを突き進んでいた日々。
 

そこから抜け出して、沢山の素敵な仲間に出会って、
「この先」について悩まず、心から楽しい時間を過ごせることも知った。

 
それでもこの季節が、その陽射しとは裏腹に潜ませている暗く重たい記憶。
 
それが今年も私を駆りに来る。
 
記憶に駆られるなんて、アホらしいとは思う。

けれど、風化するにはまだ時間がかかりそうなほど、痛みはまだ生々しい。
 
この夏が過ぎ去るまで、棺にこもって眠っていたい。

痛みの記憶が、再び現実となって私をさいなむことが無いように。
 
 
・・・なんて言っても、詮無いこと。
 
なんとかこの季節と、そして自分の過去と折り合いをつけて、
前に進まなければいけないんだろう。
 

釣りに行くこと。
 
それがわたしの「一歩」になれば。

ともすれば、あらゆることに背中を向けて、
引き篭もってしまいたい気持ちを叱咤して。

脆くも逞しく、ちっぽけなようで奥深い、
水辺の命に力を貰いに行かなければ。
 

ふと数えてみたら、これまで40種近い魚たちに触れさせて頂いてきた。
 
どれもが個性的で、尊くて、そんな命の輝きの一時に立ち会えたことが幸せ。
 

もう充分だ。

こんなに素敵な出会いに恵まれて、世界の美しさを垣間見ることができて。

自らの人生の希望やら夢やらに到達できずとも、
十二分に生きていることを満喫できているじゃないか。

そんな風に思う一方で。

私が感じえる世界など、
本当に極僅かな部分のさらに卑小な細部でしかなくて
それをもって満足というなんて
むしろ不遜でしかないのだとも思う。


 
いずれにしても、「バカの考えやすむに似たり」
 
夏の妄執に絡め取られ、腐れていきそうな私を、何処へリリースするべきか。
 
それが問題だ。
 

 



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