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▼ マケラレナイタタカイ

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昨日の朝。
クルマのフロントには雪が積もっていた。

まだベッドでもぞもぞしていると、
玄関のドアが開く音がした。
小５の息子が出かけるようだ。



「うおっ！さみっ！
　いってきまーす！」



そりゃー寒いだろう。
雪積もってるし。


なのに
半袖、短パン
じゃあ。







マケラレナイタタカイ。


彼は同学年の女子とどちらがいつまで、
この夏スタイルでいられるか競っているらしい。


でも、昨朝の気温「-１℃」だぞ。


ここまでも寒い日は何日かあった。
ヨメには
「頼むから長袖着てくれ」
と嘆願されてた。
でも、
「さむくねー」
と言って夏スタイルのまま登校を続けた。


今朝、雪はさらに積もり、すっかり冬景色に。

息子は上着を着て登校した。
「雪が降ったら長袖を着る」
ヨメとの約束だった。

競っている女子は昨日も夏スタイルだったらしい。


マケラレナイタタカイ。


もちろん彼にとってそれは今日だって変わらなかっただろう。
でも、意地になってこの「タタカイ」を続けることによって
女子が体調を崩すことがあるかもしれない。

アキラメナケレバナラナイタタカイ。

今朝の彼女の登校スタイルがどうだったかは分からない。
でも、彼女に「ハナ」を持たせることができるのは、
やさしさであり、
強さであることも学んでほしい。
「自分より小さい子と女の子には優しくしなければならない」
そう彼には教えている。

今朝、登校した彼の上着の下はいつもの「夏スタイル」。
「ハナ」を持たせても自分には「マケテナイ」のである。



雪が降った朝の前夜に時間を遡る。



磯からの仲間の釣果が聞こえてくる。
状況は刻々と変わって行く。


今、行かなければっ！


「アータ、ばかでしょ？」と言われようが。

しかし、仕事に晩飯の支度。
状況がそれを許さない。

仕事はしょーがない。
「働くからこそ休まれる」

晩飯の支度。
これも、ヨメに仕事を頼んだからであって、
ワシがやらなければならない。
20日までの期間限定だ。


許される時間ギリギリまで仕事をし、
息子をバスケに迎えに行き、
晩飯を作り、
一緒に食事をする。


外からは激しくなっていく
雨音が聞こえて来た。


20時半。
風も吹いて来た外を窓から眺める。
ビールに手を伸ばしそうになる。



マケラレナイタタカイ。



ワシにもある。

それは「凄腕」なんかではない。
自分の「気持ち」「心」との「タタカイ」。

やるべきことはやった。
誰もこれから釣りに行っても
ワシを責めることはないだろう。

しかし、ビールを飲んで息子と風呂に入る。
暖かい部屋で「釣りビジョン」を見る。
明日も早朝から仕事だし、早めに寝る。
という選択肢もある。

でも、それをしたら必ず明朝こう思うだろう。

「行けなかったのか？」
「行ったら釣れたんじゃないのか？」
「次はいつ行けるんだ？」





マケラレナイタタカイ。






「１時間だけ釣りに行く」


そう、息子に告げてクルマに乗った。



2010年12月14日21:00〜22:00

道中も雨は強まる一方。
風も激しく吹いて来た。
ポイント到着。
激しい雨、風だ。

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荒れれば入ってくる。
去年もこんな状況で数釣った夜があった。

しかし、波は激しい。
単独釣行のため足下のサカナをネットに入れるのは困難を極める。

70以下は抜く。

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タックルは強めにCPS-102。

ポイントに立つ。

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激しい。
波も。
風も。
雨も。

でも、こんなときに釣れるんだ。


期待度MAXで１投目。


キャストォうごおあっ！


イタイ・・・腰が・・・。

今朝、やっと寝返りがうてるまでに回復した腰。
さすがにフルキャストは無理か・・・。

しかし、アゲインストの強風の中では、
フルキャスト以外は考えられない。

それでも思ったポイントまでは届かない。

いつもの立ち位置に目をやると、
その岩が真っ白な波の中に消えた。


あそこに立ったら死ぬ。


一番安全と思われるポイント以外に動くことが出来ない。
水面から３m以上高い岩の上に立ち爆風に向かってキャストを続ける。

その高さなのに２、３度、アタマからまともに波を被った。

雨に濡れているのか、
海に落ちたのかという濡れ方。

あと30分。

それは残された時間というより、
そこまで腰がもつかという時間。


キャストを続けるもアタリが無い。

夕方、すでに抜かれたか！？

しかし、そんなことが問題なんじゃない。


今、「マケラレナイ」のは、
自分の「気持ち」にだ。


１時間経過。


小さな呻き声とともに最後の１投を沖のサラシへ。


波に揉まれながら泳ぐルアー。


まきまきまき・・・・





















釣れんっ！

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こんなフッキング
期待してたのに
HOGE。


自分には勝った気がした。
自然には負けた。
やるだけやって納得した。

アキラメナケレバナラナイタタカイ。

今シーズンに残された時間の「釣り」を
荒れた海と一面の雪はそう告げている気がした。

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