関西地方で異様な盛り上がりを見せていた悪魔狩り(笑)。

そう、あれは正にタコと言う名の悪魔…。

何故なら私は過去にこの悪魔を狩りに行き、逆に狩られそうになった事があるのです。


その時の追憶を覚えている限りで…


私は毎年夏になると、福井県は若狭湾にある『水晶浜海水浴場』に行きます。

まぁこの界隈の方で知らない方はいらっしゃらないでしょう。

それ程有名な海水浴場。

群を抜く透明度、泳ぎながら様々な魚(キス、ボラ、ヒラメ、アオリイカ、チャンネーのケツetc…)を見る事ができ、県内外からも多くの人が押し寄せるこの人気海水浴場。


中でも私がお気に入りの場所は、大きな岩が点在する浜の西に位置する場所。


ここにね…

いるんですよ…

たくさんの悪魔が(笑)。


もうかれこれ十年程、この場にて毎年銛を片手に狩っていたんです。

それが数年前の夏…。

もうこの頃には友人から『タコハンター』の名を欲しいままにしていた私は、一人いつもの様に銛を片手に岩場へと潜りに行きました。


時より女の子のケツを眺めながら股間の銛を…じゃなくて、タコを探していると、程なくして岩の下にナイスサイズのタコを発見！。

「いただきます。」

と、息を思いっきり吸い込んでいざ格闘開始。

まず銛をタコに喰らわし、足を銛に絡ませます。そのまま出てくればしめたもの。一気に頭を掴み、腰に下げたネットにイン…の筈が、この時ばかりは違っていました。


銛を喰らったタコが穴の奥へ移動。ここまではよくある事。

焦らず銛を離し、一度息を吸いにシュノーケルを水面に出して、呼吸を整えてからもう一度潜ってタコを銛ごと引っ張り出します。


しかしこの悪魔…


一向に出てくる気配が無い…

引っ張ってもビクともしない。
銛が刺さっているにも拘わらずだ。

足を岩肌にびったりと張り付け、逆に銛を引っ張る始末！

「おっ！このタコハンター様に刃向かおうってのか？」


当たり前である。

狩られれば、間違いなく浜で待つ女子供の腹におさまるのであるから…。

数分の膠着状態が過ぎ、息を吸っては銛を引くを繰り返す…。
単純ではあるが、これが結構体力を消耗し、思考回路が段々と薄れていく。

そのうち…


「いいかげん出やがれ！このタコ野郎！」

と性格上なりますわな(笑)。


ここで意を決し、銛を持つ右手とは逆の左手を穴の中に突っ込み、タコをしかと掴んだその時でありました。

奴の八本ある内の数本の足が、私の左手に絡み付いて離れなくなったのです。

しかしそこはこのタコハンター、そのまま一気に剥がそうと力を入れたのですが…


「あれ？」


あろう事か、私の体の方が水中に漂った。


完全に逆さま状態。

足の先が水面から少しだけ出ている状態。

「あれ！ちょっ…取れねぇ！？」


焦るタコハンター。


タコは銛と私の腕に足を絡ませたまま、残った足を使って依然岩肌にベッタリと張り付いている！


「ちょっと！？これヤバくね！？」

思いっきりもがき、足をバタつかせ何度も引っ張ってみるが、益々絡み付くだけで取れない！

シュノーケルの先は水面から完全に遠のいており、徐々に息も苦しくなって来る。


人間は焦ったり、興奮したりすると呼吸が乱れ、すぐに心臓があぶる。
その様が顕著に表れ、普段なら一分以上は楽に潜れる私も、この時はすぐに苦しくなった。


「やべぇ！やべぇ！タコに殺られた奴なんて聞いた事ねーぞ！」


何とかしなければと考えている内に、とうとう苦しさを越えて気持ち良くなってしまった。


フワ～ッと全身が浮く様な感覚…
水中であって水中でない様な不思議な感覚…。


一時、まるで苦しくなくなった。

限界を越えて、脳内麻薬が分泌されたのか意識が遠のいたせいなのかはよくわからなかったが、そんな「死」を連想させる様な感覚が本当に襲って来たんです。


あのまま気持ちよさに身を任せていたら、間違いなく逝っていたでしょう。

そして語り継がれた事でしょう…あのタコ野郎と…。


しかし、ハッ！と思い直したかの様に「いやいや！死んでたまるか！」

と、無我夢中で銛を掴んでいた右手を穴の中に突っ込み、タコの頭を思いっきり握り潰してやりました！
そのまま何とか引き剥がす事に成功！

気持ちよさを感じたまま、慌てて海面に上がり、


「ブヘーッ！！」


と声にならない奇声を上げ、タコを高々と上げた所でぐったりとしてしまった私…。


異変に気付いた友人達が駆けつけ、抱えられながら浜に戻った時は完全に意識が朦朧としておりました(笑)。


え？タコ？


もちろん頭はぐちゃぐちゃでしたがおいしく頂きましたよ(笑)。

いつもよりも多く叩き締めしてやりましたが何か？(笑)。

後で漁師さんに聞いた話によると、海中ではタコに絶対手を出しちゃダメだそうです。


皆さんも気を付けましょうね(笑)。


次回は高波編をお送りします。


◎BGM『THE FIGHT SONG』byMARILYN MANSON