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辛抱治郎さんのヨット遭難の件-①

  • ジャンル:日記/一般
海洋冒険家の白石康二郎さんから見た今回の辛抱治郎さんのヨット遭難の件に関する見解が出ていましたので、掲載させて頂きますね!


海洋冒険家 白石 康二郎さん

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私は「ブラインドセーリング 太平洋横断のチャレンジ」を応援していました。

皆さんもご存知のように今回は失敗に終わりましたが、まずはヒロさん辛坊さんが命に別状なく無事に帰国されたことに安堵しております。
報道されているテレビやネット等を見ていると、間違った解釈や、憶測をもとに意見を述べられている人があまりにも多く、政治家までが発言をされているようなので、ここで私の経験を踏まえた意見を記したいと思います。大変な長文はお詫び申し上げます。

実は遭難が日本に伝えられてから、メディアの方々に多く取材依頼があったのですが、正確な情報をつかむまで、憶測をもとに発言することは控えようと考え、今まで公式の場の発言はしませんでした。しかし、直接スタッフや船の整備にあたった方とお話をして、全容がつかめてきましたので私なりの意見を記します。

まず、多くの方が今回のチャレンジは「準備不足だったのではないか」「無謀だったのでは」と思う方が多いようです。

実は私は一回エオラス号でセーリングしたことがあります。
数年前の間寛平さんのアースマラソンで今回と同じエオラス号が使われております。
私も少しだけアドバイスをさせていただきました。その時は見事に太平洋横断、大西洋横断を成功させています。その実績からもわかるようにエオラス号はとても丈夫な船です。
ロングキール艇で障害物の衝突にも強いといえるでしょう。
安定性もあり、今回のようにブラインドのヒロさんや初めて太平洋を横断する辛坊さんにとって適切な船だったと思います。
整備を担当した方は、腕のいい方で私もよく知っております。十分な実績、経験を持たれている方で今まで世界一周の船を何杯も整備さています。
辛坊さんがブログで出向前にバウスピリットの水漏れや、オートパイロット付け根の不具合を書いたそうですが、それは全て出向前に修理し、まったく問題ありませんでした。
遠洋航海になりますと、船はいろいろな所が壊れていきます。私もそうですがそれを修理しながら走るもので、多少の水漏れなどで船が沈むことはありません。番組の企画で出港を急がせたように思っている方がいるようですが、整備不良で出港させることはありませんでした。

気象ですが、いい時期の出港だと思います。冬は私も避けます。今の時期は太平洋横断には適しています。出港のタイミングも間違っていないでしょう。台風から温帯低気圧に変わった嵐にはどうしても遭遇します。しかし、嵐を避けながら進路を変え、風速30ノット程度ならエオラス号には全く問題がありません。実は彼らには日本一流の気象予報のプロがついています。
その方はヨットの動きもエオラス号のスピードも熟知さているので素晴らしい支持をしておりました。それを聞いてヒロさん辛坊さんは的確に進路を決めていたと思います。

そして、クルーのお二方ですが、私は辛坊さんに直接お会いしお話を聞いたことがありません。
ヨット雑誌「舵」での連載を読んでいます。スタッフや関係者の方にセーラーである辛坊さんのお話を伺っておりました。私は、十分に太平洋横断を達成できるスキルを持っていたと思います。長年のセーリング経験。今回は初めての外洋へのチャレンジですが、発言の内容を聞いていて、船の知識もあり状況を適切に答えておりました。
辛坊さんが太平洋横断のスキルがあるといえる理由はもう一つあります。
船からブラインドのヒロさんを怪我なく脱出させたことです。当時は2~3mのうねりが海上にありました。一番怖いのがライフラフトに乗り移る瞬間です。船とラフトはお互いに違うタイミングで上下するので、ブライドのヒロさんをラフトに移すことは大変なことです。
タイミングを間違えればラフトとエオラス号に挟まれて大怪我をします。しかし、ヒロさんと辛坊さんの見事なチームワークで乗り越えられました。聞くところによると脱出の時、タイミングよくラフトの入り口が船に向いてくれたそうです。
ラフトには常備されている食料や水はありますが、それとは別に水、食料、衛星携帯電話、GPS、皆さんがご覧になった衝突の瞬間が撮影されたフラッシュメモリーを抜き取っています。この行動が示すようにあの状況下で冷静に対処をされているので、太平洋横断に十分なスキルがあったと思います。

写真は出港数日前に撮ったヒロさんとの写真です。
これは日本で初めてブライドセーリング世界選手権が行われた会場です。
パティーが終わった後も、ヒロさんとスタッフの方としばらく飲みました。
ヒロさんはセーラーとして優秀であり、ブラインドになってからもブラインドセーラーとして素晴らしい経験を積まれています。何よりどんな事がっても明るく前向きな方です。
でないと、太平洋横断の夢にチャレンジしませんから。
直接お会いして、いろいろ話をして、この人だったらきっと太平洋を渡れるだろうと感じました。

結論ですが、私自身が直接話を聞いてみましても、今回の太平洋横断における出港が無謀だとは言えないでしょう。十分な成功の確率があったと思います。むしろ人がうらやむバックアップ体制とスキルを持っていたのかと思います。
成功したから準備が良く、失敗したから準備が悪かったとは一概に言えないのです。
結果だけ見て判断するのではなく冷静にすべての状況を見るべきでしょう。
セーリングスポーツは最も不特定要素が多いものです
どんなに準備をしていてもダメな場合があります。準備不足でも成功することもあります。
「運」の要素がひじょうに多いのが「冒険」です。
冒険とは、誰もやったことがない大胆な事を、誰よりも慎重にやる作業です。
自分で、今までやったことのない事をするのが挑戦ですからね。



続く

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