【完全ガイド】東京湾奥の黒鯛ヘチ釣り攻略法

都心からアクセス抜群の東京湾奥。実は、この身近なフィールドが黒鯛(チヌ)が潜む、ヘチ釣りの一級ポイントであることをご存知でしょうか。

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シーバスフィッシングのような魚の回遊・着くのを待つ「待ち」のスタイルとは対照的に、ヘチ釣りはアングラー自らが積極的に魚を探し出す「攻め」の釣りです 。
一つの「良い場所」に固執するシーバスフィッシングとは異なりランガンを原則とし「魚に出会いに行く」という思想こそが、ヘチ釣りの核心です。

本記事では、長年の経験から導き出された東京湾奥のヘチ釣りにおける「釣れる理論」を、余すことなく解説します。初心者から、もう一歩上の釣果を目指す中級者まで、必見の内容です。

釣果を左右する3大要素:場所・タイミング・エサ
ヘチ釣りはシンプルな釣りですが、釣果は「どこで」「いつ」「何を使って」釣るかで大きく変わります。まずはこの3つの要素を徹底的に解説します。

1. 場所選びの極意
この釣りは潮が濁っている事が最も重要です。

基本戦略は「雨」を読め!
黒鯛の居場所を読む上で最も重要なのが「雨」の存在です。

・雨が降った直後
海側のエリアが狙い目。雨による塩分濃度の低下や下水の排出、水温低下などの急激な水質変化を嫌い、魚が沖や深場へ移動するためです。

・雨が降って数日後
泥濁りから澄み潮に移行するタイミングとなります。この澄み潮になったタイミングが魚の警戒心が上がり、最も釣り辛くなるタイミングです。海側から河川に向かって徐々に潮の濁りが戻り始めるため、潮の濁りが入り始めたエリアに絞り込む事が釣果に繋がります。
潮の濁りは水面直下の植物プランクトンの濃度によって変わるため、晴天下では日中の光合成による植物プランクトンの濃度の上昇により午前より午後の方が濁りが入りやすい傾向があります。

・晴れが続いた時
川に近いエリアに分があります。真水の影響が薄れ、エサが豊富な河川区域に魚が差してきます。

目的別エリア選択
・歳無し(50cm超)を狙うなら
隅田川に代表される大規模河川。エサが豊富な河川区域の中でもストラクチャーやブレイク、牡蠣瀬などが絡む一級ポイントに大型個体が潜んでいます。

・数を釣りたいなら
運河や港湾部。魚影が濃く、アタリの数を楽しめます。

鉄板ポイントは「魚の回遊ルート」
辰巳運河や朝潮運河、有明北緑道公園、夢の島公園周辺のように、複数の運河や港湾エリアが合流するエリアは、魚が行き来する「回遊ルート」になります。潮が動けば常に新しい魚が供給されるため、安定した釣果が期待できる数釣りの一級ポイントです。

状況に応じたポイントの見極め方
・風が吹いたら

風裏ではなく、風が直接当たる壁を狙いましょう。風によって剥がれ落ちた餌を風下の壁際に吹き寄せ、その壁際は自然のコマセが効いた状態となり、餌を求めて黒鯛が集まってきます。また、風による波気は水面に変化を与え、魚の警戒心を和らげる効果もあります。

・流れの変化
潮の流れが直接当たる壁や、ヨレが発生する場所は常に魚が付いています。また、流れが当たる側面は壁際の流れが複雑になり、落とした餌が魚に見切られにくくなります。

・澄み潮の時
魚の警戒心が高いため、身を隠せるストラクチャー(障害物)の際をタイトに攻めるのがセオリーです。


2. ベストなタイミングの見極め方
潮回り

これは、常に「適度な流れ」を探し出すための、極めて高度な戦略です。

・小潮
潮の動きが緩やかなため、元々流れのある河川が狙い目です。運河・港湾エリアでは流れが弱すぎて魚の活性が上がりません。

・大潮
干満差が大きく、潮が激しく動くため、運河や港湾部の時合が期待できます。

時合い
潮の動き始めを逃すな!

・潮止まりは釣れない
これはヘチ釣りの鉄則です。

・下げ潮
下げ始めの短い時間に時合いが集中します。チャンスを逃さず手返し良く探りましょう。

・上げ潮
上げ始めから満潮の潮止まり直前まで、長く時合いが続く傾向があります。じっくりと攻めることができます。

・7月の特殊パターン
真夏(特に7月)は、朝まずめよりも日中の上げ始めに食いが立つことが多くなります。恐らく、植物プランクトンによる夜間の呼吸の影響で水面直下の酸素濃度が下がるためだと推測しています。

・台風直前
多くの魚種に共通する現象ではありますが、気圧の低下に伴い魚が捕食活動を活発化します。

プレッシャーを避ける曜日選び
・平日
釣り人が少なくプレッシャーが低いため、断然有利です。

・狙い目は水~金曜
土日に叩かれてスレた魚が多い月・火曜は避け、釣り人が少なくなり魚の警戒心が薄れる週の半ばから週末にかけてがおすすめです。

3. 季節と状況に合わせたエサ選び
ワームや練り餌でも釣れないことはありませんが、圧倒的に釣果が出るのは貝類などの「生エサ」です。理由は、アタリが明確に出ること、そしてエサが潰されたかどうかで魚の反応(居食いなど)を確認できるからです。

・冬~春(乗っ込み期)
カニ、フジツボ

・乗っ込み後~初夏
カニ、ミジ(カワヒバリイガイ)


ミジ(カワヒバリイガイ)が特効エサになります。


フジツボが再びメインベイトになります。

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【豆知識】ミジ(カワヒバリイガイ)の長期保存方法
ミジは、濡れた新聞紙にくるんで冷蔵庫の野菜室で保管すると、比較的長く活かしておくことが可能です。

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【釣果直結】ヘチ釣りタックルと仕掛けの最適解

高価な道具は必要ありません。しかし、釣果に直結する「こだわりのセッティング」は存在します。
タックルやテクニックに関する全ての選択は、突き詰めれば「違和感なく、自然に餌を落下させる」という唯一の目的のために存在します。

オモリ
軽さが正義、されど調整が命

・基本原則
「オモリは軽ければ軽いほど釣れる」。エサが自然にフワフワと落ちていく状態が最も食いを誘います。

・調整の目安
底が取れない、アタリが分からないと感じたら、少しずつ重くしていきます。風の強い日は無理にオモリを軽くすると道糸が風に吹けて餌が違和感のある落ち方をしてしまい見切られやすくなるため、重くした方がアタリの数が増える事があります。

・流れの速いエリア
水の抵抗を減らすため細い道糸を使い、軽いオモリでも底を取れるようにします。流れのあるエリアでは重いオモリで真下に落とすのではなく、軽いオモリで流れに乗せて斜めに落としていく方が自然な落下を演出出来ます。

ミジ貝を使う際のオモリセッティング
ミジ貝をエサにする際は、オモリの付け方が釣果を分けます。

・内オモリスライダー
糸オモリよりも、ガン玉をプライヤーで潰して自作したもののほうがおすすめです。
オモリの号数はジンタンのG1〜G6を使います。

針・道糸・ハリス
・針
ミジ貝の団子など、特殊なエサを使わない限りはチヌ針1号でほぼ全ての状況に対応できます。

・道糸
フロロカーボンよりも、しなやかで扱いやすいナイロンラインの1.5号が標準的で使いやすいでしょう。
ナイロンラインはPEラインやフロロカーボンラインに比べて伸びが大きいです 。至近距離でのファイトにおいて、この「伸び」が強力な突っ込みに対するショックアブソーバーとして機能し、急な負荷によるラインブレイクや、魚の口切れによるハリ外れのリスクを大幅に軽減します。

・ハリス
ハリスはフロロカーボンの1.2号が標準的です。
「流れが速いエリアでは細糸」を使うという戦術は、ラインが受ける水の抵抗を減らし、より軽いオモリで底を取るための高度なテクニックです。

竿・リール
・竿とリールで釣果は変わらない
これが結論です。マーケティングの喧騒から離れ、真に釣果を左右する要素に目を向けるべきです。まずは高価な道具を揃えるのではなく、知識を蓄積し、観察眼を磨きましょう。

・竿の長さ
強いて言えば、長い竿の方が一度に落とし込めるストロークが長くなるため有利です。一般的には2.7mから3.0mの長さが標準です。

・竿の硬さ
硬い竿はアワセが効きやすく、魚を素早く浮かせられるため手返しが早くなり、群れを散らしにくいメリットがあります。ただし、硬すぎると僅かな糸の傷からラインブレイクに繋がることや刺さり場所が悪いと針が折れることがあり、タックルバランスを考えるとシマノのリンユウサイ程度の硬さが適切です。

・リール
太鼓リールの回転性能は、落とし込みのスピードにほぼ影響しないため、気にする必要はありません。リールの自然回転に任せて落とすと糸が張ることで釣果が落ちるので、基本的には手でリールを回転させて糸を送り込み、糸ふけを作って落とします。
糸電話の仕組みと同じで糸が張っている状態は振動や音が伝わりやすく魚に見切られやすくなります。

【実践編】釣るためのテクニックと心構え
基本動作とアタリの取り方

・最優先事項

岸壁にエサをピッタリと沿わせて落とすこと。黒鯛は壁際で壁に視線を向けて定位しています。

・アタリの取り方
穂先の変化ではなく、道糸のフケ方(糸フケ)の変化に集中してください。「フッ」と糸の張りが緩んだり、逆にスッと走ったりする僅かな変化がアタリです。

・アワセ
ひったくるようなアタリ以外は、強いアワセは不要です。竿先でそっと魚の重みを聞く「聞きアワセ」で十分です。チニングのように大型太軸のフックを強いアワセで貫通させるのではなく、小針(チヌ針1号)を一番外れにくい唇に引っ掛けるのが正解です。

状況判断とランガン
・見切る勇気
状況が良いはずなのに釣れないのは、そこに魚がいないからです。潮も濁りも完璧なのにアタリがない場合、そこに固執しても時間は無駄になる可能性が高いです。ベテランでも数枚しか釣れないような厳しい釣り場で粘るよりも初心者でも簡単に釣れる食い気のある魚のいる場所を探して積極的に移動(ランガン)しましょう。

・ランガンの足
東京湾奥のポイント巡りには、小回りが利き、駐車スペースに困らない自転車が最強の武器です。レンタルサイクルの活用も有効です。

・岸壁の観察
岸壁にフジツボやミジ貝などのエサが付着していない場所は、魚が寄り付きにくい傾向があります。回遊個体が釣れることはありますが、基本的に餌の付着していない岸壁エリアに長期間居着くことはなく、安定して釣れることはないです。

必ず攻めるべきピンスポット
どんな岸壁でも、特に魚が付いている可能性が高い場所があります。

・手すりの真下(影)
手すりの影は、上空からの外敵から身を守るための格好のカバーとなり、魚に安心感を与えます。

・岸壁の「角」
角は潮が当たることでヨレや反転流が生まれ魚が着きやすくなります。

群れに当たったら釣り切る!
同じ場所で釣れ続く場合は、群れが溜まっている証拠です。移動せず、その場で釣り切りましょう。ただし、徐々にアタリが遠のくのが普通です。

シーズン・特殊状況ごとの攻略法
・数釣りハイシーズン
6月後半の梅雨明けから8月の盆休みまで。特に「梅雨明け一発目の濁り」は、高活性の魚が広範囲に散らばり、爆釣が期待できる最大のチャンスです。

・夏の貧酸素
水中の溶存酸素が少なくなる時期は、流れが効いて水面がかき混ぜられる河川の流入部や流れや風が当たる側面の岸壁を狙います。
酸素は空気と触れる水面から溶け込み、水面直下の水が水中にかき混ぜられることで水中の溶存酸素濃度を上げます。

アクアリウムのエアレーションは気泡が水中に溶け込むことを狙っているのではなく、気泡が水面で弾けることで発生する水面の揺れによる酸素量の豊富な水面の水のかき混ぜで酸素を取り込む事を狙った酸素供給システムです。エアレーションによる溶存酸素の供給の仕組みについて(エアレーションで水面を波打たせることが重要!)

つまり真夏のベタナギかつ潮が動かないタイミングというのは水中での酸素の消費に対して水面からの酸素の供給が追いつかずに貧酸素な状況を作り、魚の活性を下げるという事です。

・秋の注意点
秋が深まり、沖のストラクチャーにミドリイガイが付き始めると、黒鯛の付き場がそちらへ移り、湾奥の港湾エリアから魚が抜けてしまうことがあります。

・下水放流
豊洲ぐるり公園の裏や有明北緑道公園などは、河川の水が入りにくい地形構造となっているため、突発的な豪雨で下水処理水が放流されたタイミングで最後まで下水の影響が受けにくく、魚が釣りやすいです。

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最後に
釣れない時は「魚がいない」と割り切り、釣れる条件が揃う場所とタイミングを求めて移動し続けること。それが東京湾奥のヘチ釣りで数を釣るための、一番の近道です。

この記事を参考に、ぜひ都会の大物「黒鯛」を狙ってみてください。

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2025年東京湾ヘチ釣りNo.1を決める大会(TOKYOBAY IS ONE)で準優勝しました。
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