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北出弘紀 KD

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シンデレラ シューズ

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東京は赤坂のとある場所。

車を目的の場所に停めようとパーキングに入ったところ、間違えたことに気づいた。

なぜか急にもようしてきたので、「ま、いいか」とそのまま駐車しひとまずトイレを探す。

その建物は2階まで行かないとトイレがないようで、仕方なく階段を駆け上がる。

通路の奥の奥にトイレを見つけ、ようやく用を足した。


さて、車を移動しなきゃと足早に通路を歩いていると・・・

誰かが自分を呼び止めた気がした。



振り返ると、そこには1軒の小さな靴屋さん。

気難しそうな親父がレジに向かって仕事をしているだけで、他には誰もいない。

何気なく棚を見ると、ちょっとやそっとじゃお目にかかれないような靴が所狭しと陳列されいていた。

かなり攻撃的なデザインのもの、本物のクロコダイルなど、普通の人には到底縁のなさそうな靴ばかり・・・・


好奇心にそそられ、店内をのぞいてみる。

「うちのお客さんには、コッチ系の人が多いもんでね」

もちろん、コッチ系とはオネエ系ではなく、ひとさし指で頬を斜めにスクラッチする人のことだ。

初対面のお客さんに、よくもそんなことを口にするもんだと不可解な気分になったが、ある靴が視線に飛び込んだ瞬間、そんな一言がどうでもよくなってしまった。



「カッコいい・・・」



シンプルな黒皮。

つま先はかなり鋭い尖がり具合ではあるが、やり過ぎでもない。

印象的なのは、靴の縦方向に縫い目があること。

かなり大胆なパターンである。

決して奇をてらうことのないオーソドックスなフォルムにも関わらず、他を圧倒する存在感。


「履いてみたら?サイズがピッタリだったら安くするよ。これちょっと変わったマテリアルだから」

ひとまず、履いてみる。






すると・・・


嘘でしょ?と思えるくらい黒皮の靴は自然な感触で、恐ろしいほど自分の足に吸い付いてくる。

素材のせい??

いや、形が完璧に自分の足にフィットしているのだ。



値段を聞くと、そう高いものでもなかった。

「ははは、こりゃ相当な出会いだね。うん、持ってきな」

にんまりした自分を見て、「いい相手が見つかって良かったな」とその靴に語りかけんばかりに、店主は大事に箱に詰め、その靴を渡してくれた。


「これ、実は鰻の皮なんだ。イタリアの職人の手にかかると、これがまた丈夫で長持ちするいい靴になるんだよ」

その素材にも驚いたが、履いていることを忘れるような軽さの理由をそこで知ることになる。



実は今愛用している靴が6年を超え、かかとも減ってくたくたになってきたので、そろそろ買い換えたいと思っていたのだ。

靴は妥協すると結局は損をするので、事あるごとに探してはいたのだが、なかなかしっくりくる品物が見つからなかったのだ。

まさかこのタイミングで出会えるとは思ってもいなかった。




間違って入ったパーキングから出るとき、ある言葉が頭に浮かんだ。

「人間万事塞翁が馬」

目的の場所を間違っていなかったら、この靴とは出会えなかっただろう。

人生、何が幸いするか分からないものだね。










 

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