チヌ考察 海藻摂取

今週は40以下がほとんどでしたが、昨日ようやく46cmのマチヌがでました
歳無しには程遠いですが、楽しめました


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ひさびさに良いサイズのマチヌが出たので、捌いて塩焼きと吸い物にしました

それは良いのですが、捌いてる途中に気になったことが腸まで海藻でぱんぱんだったこと

この写真をツイッターに貼ると某朔氏からリプがきて少しやりとり

おなかの中が海藻でぱんぱんなことを話すと、どうやらアフター明けのメインベイトは海藻とのこと

つまり呉市に限った話じゃなく岡山でも海藻を偏食している模様

おかしな話で、なぜ海藻なのでしょうか

そして、アフター個体以外は普通のエサ(貝類)を摂取しているのでしょうか


アフター個体は基本的に体力回復のために荒食いするはずです

しかし海藻を摂取した場合、黒鯛はセルラーゼ(簡単に言えば野菜からエネルギーを取り出すために小さく切るハサミのようなもの。この小さく切ったものを体内でお料理してエネルギーに変換します)をもっていないためいくら海藻を摂取してもエネルギーに変換することができないため、体力の回復は不可能です

草食動物や真冬のエサの少ない時期なら分かりますが

http://www.fimosw.com/u/amesan123/3hxxvkdtf28b5m

参考:以前考察した真冬のエサの無い時期のメインベイトに関する話

あめさんは以前、エサが少ない時期は捕食と排泄のサイクルを保つために仕方なく海藻を摂取すると考察しました

あめさんの考察が正しい場合、エサの増えたこの時期に海藻を偏食する理由がありません

そのため、それっぽい仮説をいくつか立てて考えていきます(見にくいため結論は黒太字で書きます)

1.産卵後は本来持っている分解酵素の機能が抑制されているため、貝を食べても分解できない→産卵に関するホルモンバランスの変化から普段働いている分解酵素の機能が抑制される可能性はあるが、海藻を食べても結局分解できないので、わざわざ海藻を偏食する理由にならない

2.実はまだ貝類の量が少なく、まとまった量のエサが一度に摂取できない→あめさんが以前考察した閾値説。
http://www.fimosw.com/u/amesan123/3hxxvkdtf28b5m
閾値説と勝手に言ってますが、閾値を越える程の量のエサ(貝類)が存在しない場合、一度に多く摂取できる海藻類を捕食と排泄サイクルに従い、とりあえず摂取するといった考え方。要するにエサ狙いで回遊した場合、まとまった量のエサもしくは海藻を一度に摂取するという意味です。この法則に従う場合、アフター個体に限らず、河口付近で釣れる全てのマチヌに当てはまります。つまり海藻を摂取しているのはアフター個体だけではありません

3.海藻摂取によるホルモンバランスの調整→野菜などの食物繊維は以前は生体内で分解されないと言われていましたが、最近になって腸内細菌叢により分解され、生体内で機能させていることが分かりました。ただし、エネルギーは産生しませんので、生体内異物の排泄やホルモンバランスの調整などとしてです。産卵でホルモンバランスが崩れている場合、もしかすると海藻摂取によりホルモンバランスの調整が行われているのかもしれません

4.実は海藻を分解してエネルギーを取り出せる→これも最近の
研究なのですが、海藻などには一部、トリハロースと呼ばれている糖質が含まれています。トリハロースはトリハラーゼによりグルコースへ分解できます(トリハラーゼはトリハロースを小さく切るハサミで、この小さく切られたものをグルコースといい、これを体内で料理してエネルギーに変えます。グルコースはほとんどの生物の主なエネルギー源です)。黒鯛がこの酵素を持っているかは不明ですが、セルロースが分解できない以上、エネルギーを取り出せる方法があるとしたら、このトリハラーゼしかありません。魚類は一概に種の同定が困難ですが、黒鯛がこの分解酵素を持っているなら真鯛もおそらく海藻をメインベイトにすることが可能です。これなら、エサの少ない時期に少しだけエネルギーを取り出せる海藻類を摂取して食いつなぎ、エサが増えたらより効率的にエネルギーを取り出せる貝類にシフトといった話しも理解できます。ここは論文なども読んでいないので正直考察としておいて謎な部分ですが、一番理にかなっています。ただし、この場合も②同様アフター個体に限った話ではありません

5.海藻に付着したプランクトンを摂取している→プランクトンを摂取するボラは主に海底の砂や表層に漂うプランクトンを摂取しています。わざわざ海藻から摂取する理由がありません

とりあえず思いつくのがこれくらいです

これらの仮説は単体では意味が無いので組み合わせると

アフター個体が海藻を偏食する場合、一番可能性がありそうな組み合わせは4番+2番+(1番or3番)です

黒鯛がトリハラーゼを持っているならば、貝類が少ない時期であれば海藻をメインベイトにする理由になります

1番の場合、産卵により貝類を分解する酵素が限りなく抑制されているアフター個体だけが海藻を摂取する理由にもなります

3番の場合、ホルモンバランス調整のためにアフター個体が海藻類を摂取している(ホルモンバランスを調整するには数日単位ではなく産卵後数ヶ月は必要)

この組み合わせで重要なのは黒鯛がトリハラーゼを持っているかどうかということと、非アフター個体が貝類を摂取しているかどうかです

非アフター個体も海藻類を摂取している場合、アフター個体のメインベイトは海藻という考えは間違いになり、この時期の河口マチヌのメインベイトは海藻、というのが正解になります

あめさんは非アフター個体も海藻を摂取している気がします

その場合、海藻摂取の理由は海藻からエネルギーを産生できて、かつ貝類が少ない時期だから、ということになります

答えは黒鯛に聞いてみるしかありません

案外、単純な理由だったり

なにかの参考になれば幸いだ

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