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対象魚

四国のアメゴはアマゴではなかった!

四国にはアマゴが生息するとされており、亜種関係にあるヤマメとの見分け方について、朱点がなければヤマメ、朱点があればアマゴであると広く認知されている。そこで、この魚は何かと聞かれ、アマゴと言う人はどれだけ居るだろうか?

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おそらくはヤマメと答える人が大半ではないかと思う。しかし、これは四国の在来アマゴが生息する谷において採取された個体である。ではこの個体はアマゴ域に放流されたヤマメなのだろうか?

否。四国では昔から、アマゴのことをアメゴと呼び、本州のアマゴと同じ魚として扱ってきた。しかし、源流釣り師の間ではこういった朱点のない個体についてもアメゴと呼び、四国の在来個体として扱ってきた。

近年、宮崎大学の岩槻教授らによって、生息場所の違いで朱点が出現したりしなかったりする(ヤマメとアマゴ両方の形態的特徴を持つ)、創期ヤマトマスとヤマトマスと言われるグループが報告された。このうち創期ヤマトマスはヤマメやアマゴ、ビワマスといったサクラマス類の祖先となる集団であり、現在でも生息が確認されている。ヤマトマスは、創期ヤマトマスの朱点が出現したりしなかったりする形態的特徴をそのまま引き継いで分化したグループである。対して、典型的なヤマメやアマゴのグループもあり、これらはそれぞれ朱点のない形質のみ、朱点のある形質のみを引き継いで分化したグループである。ここからは創期ヤマトマスとヤマトマスを形態的特徴が一致するため、まとめてヤマトマスとして話を進める。

遺伝解析の結果から四国の在来アマゴ (アメゴ) はほとんどが先程説明したヤマトマスであることがわかった。筆者も大学の卒業研究において、高知県物部川に生息するアマゴ (アメゴ) の遺伝解析を行い、在来とされるアマゴ (アメゴ) はヤマトマスであることを確認している。そのため四国の源流釣り師が在来個体を朱点の有無で区別せず、一括りにアメゴと呼んでいたのはある意味正しかったことになる。




アマゴ放流種苗についてはどうだろうか?
全国に流通するアマゴ種苗の多くは典型的な (朱点が絶対に存在する) アマゴのグループであることがわかっている。これは四国においても例外ではなく、四国の放流アマゴ種苗はほとんどが朱点が絶対にあるアマゴである。つまり、本来はヤマトマス域である場所にアマゴを放流していたことになる。

これの何が問題なのか?

実はヤマトマスはアマゴよりもヤマメの方がまだ、遺伝的に近い存在なのだ。つまり遺伝学的には全く根拠の伴っていない放流が行われていたのである。近年叫ばれている在来個体群の保護の観点から言えば、本来は四国には少なくともヤマトマスを放流すべきであり、アマゴを放流するくらいであればヤマメを放流した方がまだマシだった。こういったことが起きたのは、全国のヤマメ・アマゴを対象とする遺伝解析が近年まで行われていなかったことが原因であり、漁協や種苗会社が悪いわけではない。しかしこういったことが明らかになったからには、在来個体の生息場所においては種苗の放流を控えるべきである。




アマゴ放流について、四国における在来アマゴの生息場所で放流されたアマゴは定着率が良くないことがわかってきている。この原因は、人工授精で継代的に生産した種苗のために産卵の経験が幾代にもわたってないこと、放流アマゴの稚魚が在来個体に食べられていること、人間の管理下において継代的に飼育されてきた魚であるため自然環境に適応できないことなどが挙げられる。

定着率が悪いならば、放流してもあまり問題は起きないのではないかと思われる方もいるだろうが、そうもいかない。
最大の問題は在来個体のエサを奪うことである。つまり、放流をすることで相対的に在来個体のエサが少なくなり、在来個体は数を減らす。また放流アマゴは定着率が悪いため個体数増加に貢献しない。したがって放流すればするほど魚の数は減っていくことになる。資源管理のために放流している漁協は、放流すればするほど、さらに放流しなければいけなくなり、経費が増すという負のスパイラルに嵌る。

私個人の見解を述べると、種苗放流は在来個体が生息していないところで行うべきであり、在来個体が生息する谷では、放流ではなく自然繁殖に任せた資源管理を行う方が合理的であると考えている。




高知県、徳島県の渓流解禁は3月1日のため、現在は解禁に向けてソワソワしつつ準備を進めている。そこでこの1年間アマゴの研究をしてわかったことや考えたことをここに記した。ここでは四国のアメゴの話であったが、ヤマトマスは日本の南西部に分布しており、他のヤマトマス域においても考察の余地はあるだろう。今後、このようなログを書く予定でおり、四国のイワナについても考察を記そうと考えている。最後に四国のアメゴ (ヤマトマス) の写真を添えて終わりたいと思う。初投稿ということもあり、拙い文章となったが、ここまで読んでくださった方々に深く感謝申し上げる。

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