LUNKER CHALLENGE 2016

  • ジャンル:釣行記
今年中にランカーシーバス(80cm以上のスズキ)をこの手に抱えるという目標は、果たせないでいた。



しかし、事情があって10月で一旦釣りにけじめをつけると決めていた。



ならば10月最後の4日間だけは、ランカーシーバスのみを狙って、ぶっ倒れるまでやってみよう。



そう思って、全休と土日の夜を利用して、ランカーへの、そして自分への挑戦を行った。





夜になれば気温は7℃や8℃。




そして冬の足音忍ばせる日本海からの強烈な北風。



追い打ちをかける冷たい雨。




耐えて耐えて、ルアーを投げ続けた。





自分にはサクッとランカーをとる実力がないのをまざまざと見せつけられる3日間。




無情にも、金、土、日と、何のアタリもないまま、残された時間は月末、最後の夜のみとなってしまった。



ソルトルアーを始めて3年、寝る時間を惜しんでロッドを振り続けるこの3日間。



何度も、もうやめてもいいか、と思った。



もはや自分に、その資格は無いのか、とさえ思えてくる。



実際、別に、このチャレンジはいつ辞めたっていい。

誰に強制されたわけでもなく、とくにダービーや商品がかかっているわけではない。

また落ち着いたら竿を出し、釣りをしてたらランカーはそのうち釣れるだろう。




けど…、けどやっぱり、自分でたてた目標である「今年中にランカー」と、「10月で一旦、竿を置く」。この相反する2つの目標をぶち破るために、10/31の今日、絶対に釣り上げたい。



もう、今日しかない。




* * * * * * * * * * * * * * * * *




日中の予定をいろいろと済ませ、夜9時半。



「今日釣れても釣れんくても...」



覚悟を決め、家を出る。



タイムリミットはもうすぐそこだ。




一発大物狙いのポイントに入る。


今日こそ絶対出ると信じてルアーを投げ続ける。


レンジ(泳層)、ルアーカラー、ルアーの軌道やアクション、全部試した。


3年間の引き出しを一つ一つこじ開けて、その一投に込める。



気持ちとは逆に過ぎていく時間。



日付がかわるまで残り5分。



ここは、賭けてみよう。



取り出したのは、あるルアー。



10/30に釣りをした際に、釣り場で意気投合したアングラーさん(かなり有名な方でした)に、「がんばってランカー獲ってくれよ!」と譲って頂いたルアー。




このルアーなら...、どうだ...。




時間的にラストチャンスか。




深呼吸をした。胸に落ちる空気が冷たい。




ルアーを投げ込む。




暗闇の向こうに確かな手応え。



背筋で渾身のフッキング。



ドラグが悲鳴を上げる。



竿は今まで見たことのない強烈な曲がりを見せる。




かかった!!デカイ!!



全力でコイツを獲りにいく。



4日間、この瞬間のために、耐えてきた!!





一進一退の攻防が続く。




豪快すぎるエラ洗い。



水面を割って飛び出た頭の大きさから、間違いなくランカーサイズだと予測できる。



もう3年も、まだ戦ったこともない、このファイトを、ずっとイメージしてきた。




もはや、体が勝手にシーバスの動きに反応する。



完全に自分の腕になったタックルを介して、シーバスをじりじりと寄せる。




護岸でラインが擦り切れそうになるのをギリギリでもちこたえる。



この時のために用意したリーダーと、ラインシステムだ。



すべてのファイトイメージが、カチッ、カチッと、実際目の前で起こっている現象に当てはまっていく。



不思議と、獲れないかもしれない、という不安はなかった。



全力で、このシーバスと向き合うだけだった。



残すはランディングだ。



事前に護岸の石を確認して、あげられる場所を用意しておいた。



時間にすると2分あるかないかくらいだろうか。



眼下に、とうとうその白銀の魚体が横たわった。









時計をみると、ちょうど23時59分。






勝った...。





相手のいないこの戦いに、ついに、勝った...。





じきに手足が震えだし、脚に力が入らなくなり、その場にストン、と崩れ落ちた。




もう一度シーバスを見た。










ため息の出るほど美しく、力強く、そして精悍な顔をした魚だった――。








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その後、シーバスは生かしておいて、友人を呼んで写真を撮ってもらってから速やかにリリース。駆けつけてくれた友人には本当に感謝している。

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計測の結果、人生初のランカーサイズであることを確認。何度見ても、間違いなかった。

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4日に渡る戦いは、劇的なサヨナラホームランで幕を閉じた...。


この魚に至るまでにたくさんの人から勇気をもらったし、情報、道具、何か1つでも欠けていたらとれなかったかもしれない。


本当に、本当に、関わったすべての人に感謝している。





やり切った。心の底から、自信をもってそう言える。




この3年間分の気持ちに、最高の1尾が、応えてくれた...。




他にもいろいろ、言いたいことはある。




でもやっぱり、出てくる言葉は、





「ありがとう...。」

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