３ヶ月もほぼ、釣りに行けなかった。

人間とは非常にわがままな動物であることを、したたかに感じさせられる。


僕の仕事は、音楽のプロデューサー。基本的にアーティストの音源制作を主にやっている。だから、忙しいときは忙しいんだが、暇なときは暇、みたいな仕事。

だから、非常に暇なときもあったりする訳でそういう時は死ぬほど忙しいことが羨ましくてしょうがない。

「ただ、ひたすら音楽が作りたいんだよね。」

とか、言ってみたりする。

ところが、いざ忙しくなると、さらにそれがとめどなく暇なく続くと段々と、

「俺ってこんなに音楽好きだったけ？」

とぶつぶつヤサクレだし、釣りに行けないフラストレーションがかろうじて持っている自分の優しさを浸食し始める。目に余裕がなくなる。小さい子が怖がる。

そして、

やっと行けました。



柵に引っ掛けて、竿、折りました。

一投もせずに。


きれいな夕暮れを、ゴールデンタイムの始まりを、ただ目を細めながら歩いていました。帰途につくために。

ここまできてやっと思える。ギラギラし過ぎだと。久しぶりの釣りということにやっきになりすぎていたと。

釣りは遊び。もちろん憂さ晴らし的な側面もある。でも、生き物を相手にする以上、敬意と親愛をもって望まないといけない。
今日の俺はまったくもってなっていなかった。釣りに来れなかったという気持ちばかりが先走り、準備にも余裕がなかったと。
そんなやつに魚を釣る資格なんてない。などと心の中でブツブツ言い聞かせながら、たまに釣りの神様にここまでしなくてもいいだろうと文句を交えながら、とぼとぼ歩いていた。

これで何となくリセットできた。リセットついでに竿も買ってみた。生きるということはマイナスをプラスに変えること。だから、竿が折れたのは新しい竿を買うチャンスだ。と筋道を立てて。妻にはあまり多くを語らずに。




そして、