とんとご無沙汰。 
今月はじめに子供が産まれた事もあり、釣りにもまったく行けていない。 
幸せなんだけど地獄。 
 
まぁそんな時は『追憶』してみる事にします。 
 
今回は滑落編。 
あれは三年前の5月12日。
私は友人数人と渓流釣りを楽しみに、岐阜県は石徹白川を訪れていました。 
そう、話しは前後しますが、
前の追憶シリーズでも語った、熊と死闘を演じた場所。 
 
 
朝四時、まだ夜が明ける前に石徹白に到着。
私は前夜からの寝不足で、疲れがピークに達していたのですが、
外に出て川のせせらぎを聞くとそんな疲れはどこかへ行ってしまっ
ていました。 
 
今思えばこれが迂闊だった。 
 
 
早速皆準備に取り掛かり、とりあえず本流に入渓。 
私はデカイ魚を求めて、
対岸の崖下にある深いプールに的を絞り、
渡れる場所まで迂回して足を進めました。 
 
 
崖の上から川に突き出た木をしかと掴み、
三点ポジションも常に怠る事なく、
誰も立てない様な魅力的な場所を一人占め。 
 
ウシシ…とキャストを開始すると、すぐさま良型のイワナがお目見え。
ちょろいぜ！ 
 
 
しかしその後しばらく竿を振るも反応がなくなった為、
渋々来た道を戻ろうと目の前の木を掴む。 
 
おっと、わかりやすくその時の様を説明しましょう。 
 
口に竿(笑)、左手は崖の窪みに指を掛け、右手は木をしかと掴む。
左足は崖の岩盤に…。 
 
想像していただけたらわかる様に、
そうした完璧な三点ポジション＋竿１本から、
右足を先の岩に乗せようと体重をかけたその摂那…。 
 
 
甲高い音が辺りの山々に響き渡りました。 
 
 


「ボキッ!!」 
 
 

更に追い打ちを掛ける様に、乗せたばかりの右足の岩肌が崩落！ 
 
直後私の体は宙に舞った。 
 

咄嗟の事に、体をよじる事も、もがく事もなく、
ただただ、竿をくわえた口だけを無様にモゴモゴとさせながら… 
 
 
『ドッボ～ン!!』 

釣りを開始してから僅か45分、見事な水中への落下でありました。 
 
 
推定気温12度。水温5度。 
 


冷たかった。 
 
 
山も川も岩も木も、
そして笑い転げている友人も…。何もかもが冷たかった。 
 
 
幸い、深いプールで岩場ではなかった事
(下が岩場だったらと思うとゾッとする)、
そして流れもきつくない場所であった為、大事には至りませんでしたが、
私の釣りに対する情熱が一気に奪われた瞬間でありました。 
 
 
胸まで水を蓄えたウェーダーは、ワタリ50cmはあろうかという程。 
まるでビーバップさながらボンタンの様な有様でございました。 
 
その後の私はパンツ一丁の体操座りで自失呆然。
これまたまるで、ボンタン狩りにあったいじめられっ子の様でありました。 
 
 
今でもその木は折れたままで在ります(笑) 
 

次回はタコ編をお送りします。
 

◎BGM『Good Riddance(Time Of Your Life』byGreen Day