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お礼 『雷鳴~長い長いトンネルの出口で見えたもの~』

  • ジャンル:日記/一般
  • (小説)

このたびは、16回に及ぶ連載にお付き合いくださいまして、本当にありがとうございました。

 

『雷鳴』は、広く公にした初めての作品ですが、執筆順でいうと三作目です。

 

一作目は、高校2年生の時に太宰治の『人間失格』に触発されて書いた『友情』という短編小説でした。

 

二作目は、8年前に高知にアカメを釣りに行った時の経験をモチーフにしたものです。その時のドキュメントをブログに書いたのですが、それを脚色して小説に組み直しました。概ね書き上がっていますが、まだ推敲を重ねているところです。

 

さて、僕の小説の原点のお話をしましょう。

 

一作目の『友情』が、運悪く(運良く?)国語のK先生の目にとまりました。しかも大学の卒論のテーマが太宰だったという人でした。

 

その先生曰く、『友情』は、設定は太宰をなぞっているだけでオリジナリティがなく、作品全体の3分の2は不要な記述であり、それらの記述は何の伏線にもなっておらず、小説全体の中で有機的な意味合いを持っていないということでした。

 

高校生には辛い言葉です。それでも、この時初めて、小説においては構成や伏線の敷き方が作品の成否を決めるものであり、どれほど大切なものなのかということを理解することができたのです。

 

これが僕の小説の原点なのです。K先生には、高校卒業後一度もお会いしていませんが、今でも感謝しています。

 

その後、小説を書くことはありませんでしたが、3年前くらいから急に創作意欲が湧いてきました。理由は自分でもよくわかりません。ただ、その成果の一つが『雷鳴』だったというわけです。

 

『雷鳴』を書き始めたのは、日常の中のちょっとした出来事がきっかけで、突然アイディアが文字通り「降ってきた」からでした。今では何がきっかけだったのか思い出せないほど些細な出来事だったように思います。

 

そのときに、作品を貫くテーマ、大まかなストーリー、作品の象徴、登場人物の位置付け、その人間関係などが一度に降ってきたので、それをスマホのメモ帳に書き留めておきました。

 

不思議なもので、大まかなストーリーが決まると、今度は物語を膨らませるための発想が、文字通り次々と「湧いてきた」のです。ストーリーの順番など関係なく、どんどん湧いてきたのです。

 

それらを思いつくままにスマホのメモ帳に片っ端から「殴り書き」していきました。その中には、是非とも使いたい言い回しもあれば、物語の厚みを増すための様々な「素材」もありました。歌、香水、小説、レストラン、バー、ホテル、メール、LINE、株、タバコなどがそれです。

 

殴り書きしたメモ帳を何度も眺めていると、そのうちに、物語の構成が文字通りジワジワと「浮かんできた」のです。それに合わせて、メモ帳に殴り書きしたものを整理(カット&ペースト)していきました。

 

このプロセスを繰り返した結果、構成が固まったのです。その構成に従って、全ての記述に意味を持たせ、それらを有機的に関係づけるために伏線を敷き、それを回収する場所を決めていきました。

 

実は、この伏線を敷く作業が一番楽しいものでした。漫才やコントで言うところの「フリとオチ」を仕込むということです。読者の皆さんに「気づいてもらえるかな?」と想像しているとワクワクしていました。

 

あとは、出来るだけ読み返すことをしないで、時間の許す限り一気に書きました。そうすることで、ストーリーに一貫性が生まれるような気がしていたからです。

 

推敲は後でまとめてやりました。小説の全体像を眺めながら推敲することで、伏線不足や回収不足に気付きやすかったと思っています。こうして出来上がったのが『雷鳴』なのです。

 

登場人物の中で僕が気にかけているというか、親近感を持っているのは、実は、清水課長です。推敲を重ねるうちに、どんどん存在感を増していきました(というほど描ききれていませんが)。今は、具体的なアイディアは何もありませんが、『相棒-米沢守の事件簿-』のように、清水課長を主役にして、スピンオフを書くのも面白いかもしれません。

 

執筆の楽しさは、作品の中ならどんなことでもできてしまうところにあるのだと思っています。僕が福山雅治になってモテモテの人生を送ることだってできるし、夏目三久や優香と大恋愛することだって可能なわけです。

 

「ありそうで、ないこと」や「なさそうで、あること」などを自由自在に綴ることができるのです。その「自由」がたまらなく心地よいのです。それに気づいてから、文章を書くという行為に無常の喜びを感じるようになりました。

 

今のところ、次のテーマはまだ「降りてきて」いませんが、アイディアが降りてくる限り、この自由度の高い「遊び」を続けようと思っています(「遊び」なんて言ったら、職業作家に怒られそうですね)。

 

最後になりましたが、『雷鳴』の大きなテーマの一つである「一目惚れ」についてはHT氏に、物語の「素材」として重要な位置付けにあったLINEについてはKK氏に、それぞれ示唆に富む御教示を頂きました。この場をお借りしてお礼を申し上げます。

 

令和元年10月

加藤義朗

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