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▼ 夢追い人であれ。
- ジャンル:日記/一般

一抹の虚無感とともにそのカタログを開いた。
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クローゼットを開け、
1本の釣竿を取り出す。
その漆黒のブランクスに触れた時、
忘れかけていた数々の思い出が生還ってくる。
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昨シーズンまで主力として使っていたロッドだ。
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“ダイコー・レイヴンRVS98M”
今となっては珍しい、
ブランクスに入念な下地処理と、
堅固な塗装を施したこだわりの釣竿である。
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コルクグリップとソリッドなブラックカラー仕上げのブランクが美しい。
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その名は、
海を渡る鳥、
レーヴァン(渡鴉)が持つ漆黒の翼に由来する。
このロッドとともに数々のフィールドを訪れ、
数多くの鱸を手にした。
何か節目となる鱸を手にした時、
傍らにはいつもこのロッドがあったと言っても過言ではない。
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昨年90cmオーバーを獲った時にもこのロッドを使用していた。
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しかしある時、
自分は自らの不注意でこの釣竿を破損させてしまった。
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「この竿で釣りたい」 そう感じさせる魅力がこのロッドにはある。
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釣り人は皆、
夢追い人である。
理想を求めて彷徨い、今日も竿を振る。
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細部まで行き届いた作り込みが所有感を高めてくれる。
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気高き求道者たちが道具に求める性能。
そのハードルは高い。
並大抵のことでは成し得ない。
だから夢を追う者が手にする道具を造る者もまた、
堅忍不抜の夢追い人でなければならない。
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ヒトが使うものはヒトの手で造る。だからこそ手に馴染む。
(DAIKO LURE FISHING CATALOG 2011 参照)
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釣竿の生産はこの大量生産の時代にあってもなお、
意外なほどマンパワーに頼る部分が多い。
ガイドの取り付け。
樹脂盛り。
何より釣竿の性格を決定するブランクスの設計。
それらを成すものは机上に並べられた数値ではない。
紛れもなく、
職人たちが持つ、
経験に裏打ちされた確かな “勘” だ。
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釣竿は生活必需品ではない。余暇を充足するための道具であることがほとんどである。だから高いレベルが要求される。
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釣竿の設計を難しくしている要因。
それは使い手によって釣竿に求める性能が微妙に違うという点である。
そして何より、
その「求める性能」には “好み” が寄与してくる割合が圧倒的に多いから尚更である。
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感覚・好みを数値化することは難しい。しかし、職人の手によって見事に具現化される釣竿は“工芸品”と呼ぶにふさわしいかもしれない。
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だから釣竿の設計は難しい。
数々の障害にぶち当たることだってあるかもしれない。
でも夢追い人ならば立ち上がる。
リスクに配慮した時点で生まれるものは妥協しかない。
立ち上がったその先に彼らが見るもの。
それは栄光か、
それとも、
敗北か。
11月26日。
大丸工業株式会社が釣り業界からの撤退を表明した。
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国内ブランクスサプライヤー大手、大丸工業株式会社(ダイコー)は26日、自社ホームページで釣り事業からの撤退を発表した。
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平成26年11月26日。
「弊社は誠に遺憾ながらフィッシング事業を継続することは困難と判断し、
平成26年11月25日に開催した取締役会において、
フィッシング事業からの撤退を決定致しました。」
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突然の発表に、驚きを隠しきれない。
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1951年から2014年。
「自らが“欲しい”と思う、“やってみたい”と思う竿造りをする」
60年という偉大な歴史の中で彼らが確立した確固たるスタイルである。
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「世情に流されることなく、自らが必要と思うものを誠実に造る」
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どちらかというと、
モノの性能は二の次で、
販売戦略やネームバリューが物を言うのが今という時代なのかもしれない。
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ひと振りひと振りに誠実に向き合う。質実剛健という言葉が適当な釣竿を造ってきた。
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その時代にあっても、
自らが必要と思うものだけを造り、
我々に問う。
彼らは紛れもなく職人であり、
“プロ”であった。
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虚飾を廃して品質で勝負する。自分はその社風が好きだ。
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ダイコー・レイヴンRVS98M。
絶対的な軽さを謳うこの釣竿は、
軽量化思考が強い昨今のロッド市場の中で見ると、
言うほど、軽くはない。
群を抜く感度があるわけでもない。
しかしそれらを補っても余りある、
“この竿で鱸を釣りたい”と思わせる魅力があった。
その魅力は 販促重視でそれっぽく仕立て上げられた釣竿には絶対に、ない。
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使い手がこだわりを載せたくなるロッド。自分はこのロッドのバットガイドをダブルフットにカスタムして使っていた。
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ダイコーが釣り業界を撤退した今、
彼らに掛けるべきは、
60年間の苦労を労う言葉だろうか。
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自分の不注意で破損させてしまった穂先。断片は残しておく。彼らが復活するその日まで。
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いや、
違う。
夢追い人は道半ばで夢を諦めたりはしない。
何度でも立ち上がる。
必ず這い上がってくる。
その先に彼らが見るもの。
それは栄光か。
それとも敗北か。
敗北でもいい。
敗北を恐れた時、そこに生まれるものは妥協しかない。
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ある願いとともに、そっとカタログを閉じる。彼らに掛けたい言葉は、ただ、ひとつだけだ。
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「夢追い人であれ。」
彼らが求道者であってほしい。
そう切に願った。
- 2014年11月29日
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