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釣りデートは釣りではない

  • ジャンル:釣行記

 シンジ(仮名)という気の合う奴がいた。おおらかで小学生みたいなかわいい面があり女にモテた。私同様、大の釣り好きだった。
 

 「明日釣りに行こう」という事になった。ただシンジはデートの約束をしているので彼女のヨシエ(仮名)も同行して良いか、と言う。ヨシエが良いならもちろん良いと答えた。

 翌日、シンジが迎えにきてくれた。「お、久しぶりー」ヨシエは白いふわッとしたワンピースと華奢なおしゃれ靴、肩からショルダーバックをかけてお化粧もバッチリだった。
運転席でいつもはおおらかなシンジが口を尖らせて「こいつ…歩きやすい靴と動きやすい服で来いと言ったのに…ブツブツ。」と〝遠足のご注意〝みたいなことを言っている。

 

 私たちは郊外のため池に着いた。ヨシエは「こんな所だとは思わなかった」と言った。シンジはそれを聞いて「だから言ったろ」と言ってぷんぷんしている。その後も仲が良いのか悪いのかよくわからないやりとり。ヨシエはシンジのルアーをロストするなどして怒られながらも頑張っていた。そのうちヨシエが「釣れない」「お腹すいた」と言い出し三人で飯を食いに行くことになり、その後お開きになった。ヨシエのふわふわエアリーなワンピースには緑の草の汁と黒い煤みたいな汚れがついていた。
 このことが原因ではないが、数ヶ月後、シンジはヨシエと別れた。

 

 私は毎日毎日デートをしていた。毎日は大袈裟だが体感ではそんな感じで、彼女のカズミ(仮名)が言うにはこの二ヶ月間で二十七日、一緒にいたと言う。

 カズミは「釣りがしたい」と言った。私は一瞬うれしい気持ちになったが、ふとシンジとヨシエと行った釣りのことが頭に浮かんだ。「男友だちと行く感覚でうかつに女性と釣りに行ってはならない。」と思ってしまった。しかしデートはマンネリ化しておりカズミの提案を断る理由も見当たらなかった。

 夜の港。振り出しの安竿を取り出し伸ばした。そして地面に置き、「ピクピクと引いたら上げよう」と言って座り込み、話などしていた。「引かないね」「いないね」飲み物を手にカズミはじっと竿を見つめたりしている。一時間半ほど経った。

「そろそろ帰ろう」「釣れなかったね」

 私は竿を手に正直に言った。「だって糸も針も餌もついてないもん」

「ええ~ーー」と言ってカズミは驚きそして笑った。

 

 釣りに夢中になるとつい真剣になりすぎ口うるさく注意したり、無理をさせ服を汚すなどし辟易して、きっとカズミは二度と来たがらなくなるだろう。だからあえて“釣れない釣り”を仕立てて、雰囲気だけを味わわせたのだった。

 時には肩の力を抜いて、笑いを釣るくらいがちょうどいいのかもしれない。

あ、それと彼女をつれて釣具屋さんに行くのも注意が必要だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

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