プロフィール

ショータ

栃木県

プロフィール詳細

カレンダー

<< 2025/7 >>

1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31

検索

:

ジャンル

アクセスカウンター

  • 今日のアクセス:27
  • 昨日のアクセス:36
  • 総アクセス数:242576

QRコード

ショータ・ジェンキンスです。 ようやくfimoの触り方を理解してきました。 皆様よろしくお願い致します。

イギリスで出会った思い出の鱒釣り

実はこの記事は、以前 “鱒つりの文化を記録する"をミッションにかかげ、さまざまな土地の釣行ドキュメントに舌鼓を打ちながら、渓流釣りの醸し出す所作を楽しむウェブサイト” として、日本だけに留まらず世界各国のトラウティストに指示されていたUnder Water Graffiti(アンダーウォーターグラフィティ)というウェブサイトに寄稿させてもらったもの。残念ながらUWGは閉鎖となってしまったのだが、実はこの時に出会った魚のストーリーがポルタメント170のPV動画になり、昨日からTULALAのホームページにて公開されたのです。

これを機に、この記事をもう一度引っ張り出させてもらいました。UWG公開時とは写真が若干異なりますが、雰囲気が伝わればと思います。

(以下原文)
 

イギリス・イッチェン川 
英国の初夏  〜思い出の鱒を追って〜

文と写真=Shota Jenkins Konno, / 2014.06.20
 

image


イギリスでトラウトを釣る。その響きだけを聞くと何ともかしこまった印象を受ける。英国では鱒や鮭を高貴な魚として、古来より釣りは貴族の遊びとして嗜まれてきた。
 

そんな物語の中で語られる釣りの多くはフライフィッシングであり、今でもヨーロッパ、特にイギリスではトラウトを釣るためにルアーが用いられることは少ない。中には、フライフィッシング以外の釣りをcoarse fishing(下等な釣り)などと蔑む人も少なくなく、名のあるチョークストリームやリザーバーは基本的にフライフィッシングオンリーであり、地元クラブへの入会や高額な入漁料が必要とされる。そのため、ヨーロッパにおける鱒釣りとは庶民にとってなかなかに敷居の高い世界なのだ。
 

そんな紳士のスポーツであるトラウトフィッシングを、もっと気軽に、それもルアーで楽しみたい。そんな思いを胸に、テレスコピックを片手に色々な街に足を伸ばしていたのはもう何年前だろうか。20代半ばだった自分には、その頃(今でもだが)の経済力では法外ともいえるお金を出して釣りをすることなど不可能だった。そんな時、まるで抜け穴の様に見いだしたイギリスでトラウトを釣る方法。それは、自分が一番慣れ親しんでいた市街地を流れる川での釣りだった。ロンドンに暮らし、毎日のように街中を流れる運河でパイク釣りを楽しんでいた自分にとって市街地を流れる川での釣りはむしろ得意分野である。最初のうちは外国人ということもあり、自然愛護を謳う住民や通行人にやっかみを言われることも少なくなかったが、おかげで人が多くても注意しながら釣りをするテクニックとメンタルが磨かれた。大物を釣るたびに周りの人間が携帯やカメラを取りだし大撮影会になってしまうのにも随分と慣れて、気付けば対立していた釣り人とも友達になっていた。

 

そして今年、数年ぶりに訪れた街はほとんど表情を変えずに僕を出迎えてくれた。ロンドンのような大都会とは違い、時間がゆったりと流れているせいか通りかかる人々も「大物は釣れたかい?」「信じてくれ、俺はここでこんなに大きなサーモンを見たんだ!」と気軽に声をかけてくれる。今回イギリスでのトラウト釣行に選んだのはイングランド南部、ハンプシャーにある田舎町。ターゲットはもちろん、貴婦人とも称されるブラウントラウトだ。

 

街中を流れているとはいえ、川の中は青々とした水草で溢れ、透明度も申し分ない。街中を縦横無尽に走る、日本ではドブと呼ばれてしまう様な細い用水路でもいたるところにブラウンの姿を見つける事が出来る。美しい姿と崇高なイメージを崩してしまったら申し訳ないが、イギリスの子供がブラウンを釣るというと、基本エサはパンである。フライフィッシングで有名なとあるチョークストリームでも、地元の親子が水鳥にパンを撒き始めると釣りにならないらしい。
 

 

image

 


早速ミノーを軽くピッチングで落とし、何度かロッドを煽ってみると1投目からチェイスがあった。その可愛らしい姿とは裏腹に、一度スイッチが入れば岸際に身を乗り出して獲物を追いかけてくる獰猛な魚でもある。これは期待出来そうだ。少し下って行くとググンと押さえ込まれる様なバイトがあったが、数秒のロールの後すぐにバレてしまった。
 

 

image

 



その後もなかなかのサイズをバラしてしまい、少し焦る。と言うのも、実はカメラを背負って釣りをしている手前さすがに1匹もキャッチしない訳にはいかないからだ。現在最終調整中のロッドのPVとスチル撮影も兼ねて、自分にとっては懐かしいこんな田舎での取材をゴリ押しした感じも否めないのだ。かわいい手のひらブラウンをどうにかキャッチしたところで、実績のあるエリアに入る。手前には美しい白い花を咲かせる水草が生い茂り、対岸はカレントが木陰をくぐってシャローに注ぐ1級ポイントだ。少しダウンにキャストし、ほとんどリーリングはせずに水面近くでヒラを打たせる。そしてちょうど水草のエッジにルアーが差しかかろうかというところで、水面を割って魚が出た。そしてジャンプ。大きい。明らかに今日一番の魚だ。特有のグリングリンとしたファイトをしっかりとロッドで受け止め、水草に潜られる前に自分が下流へと走る。どうにかしてネットにすべり込ませたその魚は、頬に青い化粧をまとい、強い日差しの下で黄金色に輝いていた。その体躯はまさに宝石を身に着けた貴婦人そのものだった。
 

 

image


 

知らぬ間に息が上がっていた。自分の呼吸を落ち着かせるようにブラウンの口に冷たい水を送りながら、その見事な魚体にしばし見とれる。普段、魚の長さをあまり測らないのだが、メジャーを当ててみると38cm。魚種を考えれば決して大きくはないが、その肉厚の背中や張り始めた吻の部分を見るとサイズ以上に大きな魚に見えた。このフィールドでは悪くないサイズだ。しばらくすると、彼女は流れに逆らう様にすーっと水草の間に姿を消した。はためかせた大きな尾鰭はまるでロイヤルアスコットの帽子のようだった。


 

image

 


撮影をしてくれた人間と軽いハイタッチをすると、何とも言えない満足感と心地よい疲労感に包まれた。自分は煙草を吸わないが、きっとこういうシチュエーションで吸う1本は格別なのだろう。数年ぶりに手にしたイギリスのブラウン。何度もあの素晴らしいファイトを反芻しながら、もっと前の、初めてここへ来た時のことを思い出していた。
 

 

image

 


イギリスに暮らし始めたばかり。まだ拙い英語で僕は話しかけた。
 

「何を釣っていますか?この川にはどんな魚がいますか?」
 

「ブラウントラウトだよ。こいつらはパンが大好きなんだ!すぐに釣れるからこっちに来て見てみろよ!」 

 

目をキラキラさせながら少年達は答える。思えば、あのときの少年達との会話から僕のトラウトフィッシングはスタートした。あれはもう10年も前になるだろうか。そういえば今日みたいな暑い夏の日だった。

 

Tackle Data

Rod » TULALA Portamento170(プロトタイプ)
Reel » SHIMANO BIOMASTER Mg 2500S
Line » フロロPE(0.8)
Lure » Smith D-CONTACT

コメントを見る