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  • ジャンル:釣行記
約、25年前の冬。
僕は父親から手解きを受け、海洋生物が付着した岸壁の際に潜む魚を釣った。
生き物から伝わる、竿を叩く独特の感触。
5歳児の腕っぷしでは到底敵わないと思わさせる強さ。
人より細い体格に生まれた僕は、その引きの強さに竿を押さえ込む以外、術はなかった。


俺「お父さん、どーしたら良いの?」


親父「ほれ、頑張れ」


5歳の子供が、人ではない命から感じた生き物の本当の生き様。
そんな頭の振り方は、糸を鳴らし、壁に張り付き、釣り竿を水中へ引き込む。

糸を引く呼吸のような攻防に、息をすることも忘れ、背鰭の毒でジンジンした手の痛みは忘れもしない。笑

親父は、''助けて!''っと助けが欲しい場面でも、1人でなんとかなると判断した時その言葉を消す。

魚釣りにおいて、そこは特に厳しい。

釣りは生き物を相手に遊ぶ、人の道楽。
辛いのは魚の方。
''最後まで自分の力で取れ''
''それが嫌なら辞めればいい''

そんな強烈なメッセージが添えられているんだろう。''字は少ない''が重い言葉である。

僕も、男として生まれて30年。
釣り歴25年。
夫歴8年
父親歴5年になった。

「パパの仕事は魚釣り」

幼稚園でそう胸を張る息子には笑わされるが、それくらい、俺=魚釣り。と認識しているんだよな。
俺に似て若干華奢な身体だけど、小さい頭で精一杯、毎日を、たくさんの事を考えて、生きている事だろう。

本当に興味があるのか、俺を喜ばせたいだけなのかわからないけど、息子の口から
''魚を釣ってみたい''っと

''よし、行こう''
せかせかしく準備。
男二人、いつもより早足に、息子は小走りで近所の川へ向かう。
普段、息子の歩く速度に合わせて散歩する事を意識しているが、この道中だけはわかっていても早歩きになってしまうんだ。

毎日見ている景色なのになんでこんなに晴れやかなんだ。
ウキウキするのは何故なんだ。

俺は心の底から魚釣りが好きなんだ。って改めて思う。


''今日は風が無いから鯉釣りには向いている。
だけど、潮汐の影響がある川だから水が残っている所に魚は集まるはずだよ。
''鯉はカーブを釣れ''
だから、あそこへ行ってみよう''

そのポイントには、目を見張るたくさんの、大型の鯉。
息子の体格を考慮して、竿はメバルロッド。
こんな大鯉を釣るには頼り無さすぎるタックルだが、生き物の生き様を体験するにはもってこいだ。

息子に竿の持ち方を教え、次男坊が食べる予定だったカニパンを針に付け、

ポッチャン。
ドーーン!!


息子「パパ、どーしたら良いの!?」

焦った顔、テンパリ方、華奢な身体で必死に竿に食らいつく姿が、俺を見てるようだった。

俺「ほれ、頑張れ。笑」

整備不良で若干痛々しいドラグ音だが、必死に竿を持つ。

''竿は曲げないと、魚は寄らないよ''

そー聞くと、竿を持ち上げる。

''下げるときにリールを巻く''

そー聞くとリールを巻く。

頼りないポンピングと渾身の力で寄せた1メートルは、簡単に対岸近くまで糸が突き刺さる。 

魚釣りはこの瞬間にいかに冷静になれるかが難しい所。
考え事も、晩飯の心配も、明日の事も、仕事の事も、どっかへ吹き飛ぶこの瞬間。

幼稚園と我が家を何往復しても、どんなに公園を散歩し探し回っても、魚釣りがもたらす、この独特な時間は見つからない。
人が作った道具と、魚を研究した知識と、魚を釣りたい努力を怠らない釣り師のお蔭で、俺はたくさんを学び、いつしかこの時間の虜になってしまったんだ。

さすがに辛そうなので途中で交代。
''最後まで自分の力で取れ''
俺は親父にそー教わったが、まずは魚釣りを知って欲しく、いや、嫌いになってもらいたくなくて(笑)
最後のランディングだけ息子に終止符を打ってもらった。

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やればやるだけ釣れる。だから
''潮が低いから次は上げ潮を行こう''
っと1本釣った所、途中で切り上げる。
''その日、最初の1本が釣りの全て''
作家、開口健のこの言葉の意味がよくわかる僕は、早めに竿を納めた。

帰りの道中は、なんだか清々しく、ゆっくり歩く。
いつも見かける、ペアで泳ぐ夫婦鱸とすれ違い、スクールで狩りを行う鱸の群れ。
その後ろ姿を、斜め上から見る。

行きの高揚感。
帰りの爽快感。
これもまた、釣り。

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