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▼ 仲間の鱸と覚悟
- ジャンル:釣行記
10月26日(土)
午前6時22分
この時間、現在地の土地からして誰から連絡が入ったかなんてすぐにわかる。
こんな時間の連絡は、朝飯の誘いではないだろう。
信号待ちでチラっと画面を見ると
''手が震えた''
っと見える。
右手をハンドルから離し、俺はガッツポーズした。
「やったじゃないすか~」
口元が緩み、静かに彼の努力を称える。
1年も前から気合いに満ちた、彼の鱸道が実った瞬間である。
さっきまで重たかった目蓋はぱっちりと開き、脇道に1回停めて、その魚の写真を見る。
「おっランカーありそーですか?」
っと、ラインを入れ、車を市内へ走らせる。
時刻、午前6時28分
僕は、夜中の上げの時合いで、熊本県菊地川の河口に入り、60~70センチほどの鱸を3つキャッチ。
前回、手も足も及ばなかった河川で早々に鱸をキャッチし、ボイル音も多く響く河川の吐息に、今後の展開を模索する。
市内河川を打つべきか。
天草へ走ってみるのか。
天草行って、もがくのもありだよな~
''リベンジへの挑戦か''
''新天地への挑戦か''
信号は赤。
迷いの中朝飯代わりの納豆巻きをかじりながらチラリと携帯を見る。
又97。。。
97?97ってなんだ?
又?
俺は慌てて車を停めてしまったため、後ろのトラックにクラクションを鳴らされてしまった。
すぐにラインを見た。
その内容に目の瞳孔が開く
ラインは6時45分に届き、現在時刻は、6時59分。
最初のラインから既に30分以上経過してしまっている。
ばっかやろうが!!!!!!
TEL,,,
俺「平田さん、やばいって!写真は?逃がしちゃった?写真写真!!」
平田さん「まだ右手にいるよ~」
俺「場所は?すぐ行く」
聞こえる声はどこか震えているように感じた。
自分が持てる限界の重りを、ギリギリまで持っていた時の二の腕のような、小さな震えだった。
こんなにホッと胸を下ろす経験はなかなか味わえない。
納豆巻きだけでは満たされない燃費の悪い俺は、朝飯が足りねぇ空腹感なんぞどっかに飛んで行き、俺は彼の待つ川へ、彼の持つ魚を撮りに向かった。
魚釣りは、釣り場を巡りながら時間を重ねるごとに、釣り場との時合いが絞り込まれ、そして具体的な攻略法が徐々に見えてくる
1日目よりは2日目
2日目よりは3日目
と日時を重ねるほど、ヒットの確率と自信が高まって行く。
何日もプラ釣行を重ねていた彼は、ぶっつけ本番の僕よりはるかに鱸に近く、一つ自信に満ちていた。
しかし、直前のプラで本命と見ていた河川のベイトが抜けていたと言う。
この事で不安要素はどんどん膨らみ、重くなり、精神的に追い込まれていた事はよくわかっていた。
本命と見ていた川をこんなに直前に見切る事はとても勇気がいる事。
この時頭に出てきたのは
''また1から探さなければならない絶望感なのか''
''新しい川を見れる高揚感なのか''
あの時の感情はよく知っている。
彼の見つけたポイントは、流れは複雑で重い。
時に早く、緩く膨らみ、スッと寄る。
打つ流れの変化は大きいが、この分チャンスが多い。
ベイトはボラ。
ローカルのアングラーは1人も来ない、上げの時合いだったと言う。
これは普段彼が心掛けている、潮位と流れを利用した、ある時間帯にだけ起こるストラクチャーを利用した釣りと言える。
元に、満タン水位で、僕からは何も見えない川の方向を指差し、ここに''アレ''
ここの地形がこーなってて、あそこに''アレ''がある
と頭の中にはしっかり地形が3D化されており、流れがどっちに走るかもわかっている。
キャストする位置、狙いの流れが見えていて、ベイトが登ってくる潮位も見えている。
寝る間を惜しみ、駆けずり回った者が手にしたトロフィー
熊本からの最高のご褒美。
偽りの無い瞳に屈託の無い笑顔。
釣りに対する姿勢、考え方、歩みかた。
周囲の空気を一瞬で笑顔に変える才能を持つ彼は、目の前の魚を見てあまり笑わず、感無量って顔で、我が子を見る目とは違ったいとおしい目で下を向いている。
これが、本来の彼なのかな?っと思いつつ。
鱸釣りを通してこんな男と出会えた。
その男は今、大鱸を握り目頭を熱くしている。
その土俵がフィーモで出会えた事への感謝と感動。
仲間の魚なのに、仲間が取ったのに、なんでこんなに嬉しいんだろう。
こんな瞬間、こんな時間、こんな大鱸を目の当たりに出来た事。
釣りがもたらす、目には見えない、人しか感じる事ができない''何か''。これを超えるものを僕は他に見つける事ができない。
やったな!
平田家、大黒柱!
・熊本シーバスパーティー2019
鱸:100.5センチ、7キロ
釣り人:平田タカノリ氏
ルアー:メガバス、カゲロウ124F
ロッド:ゼナック、プレジールアンサーPA89
リール:シマノ、18ステラ3000MHG
ライン:サンライン、キャリアハイ1号
- 2019年10月30日
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