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原付の男

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▼ APIA＋サヨリ

  • ジャンル:凄腕参戦記
先月は勝ちたかった。

APIAだけに。。。。

月初めに統計的に400cmを超える実績ポイントは抑えていた。

まぁ、90cmが絡んでくると勝てるだろうと見積もっていたが自然はいつも予定外の動きをする。

序盤でオモイッキリ外したのが後に響いて立て直した頃には最終日が迫っていた。

「今プロになっても実力がついていかない。」

そう実感させるには、十分な結果だった。

落ち込むひまもなく実力不足の細腕で11月の凄腕が始まる。

時はさかのぼって。

土砂降りの10月30日。

カッパを着て17時30分から投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

カッパに水が染み込んで寒くても我慢しながら投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

ヘルメットのブレードが曇って何回も手で払いながら投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

効率よく　もっと楽に　もっと合理的にと頭をよぎるがそれを無視して投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

ノーバイトのまま6時間たった所で心が弱い方へ流れる。

このまま続けても釣れないんじゃないか？

釣れないなら帰って寝たほうがイイに決まってる。

でも、投げ続けなきゃ釣れない。

狭間で揺れ動く心を慰めるべくとにかく一旦休憩しようと思い缶コーヒーを飲む。

目の前のボイルに釣れてない事実、頭の中はネガティブな方向に傾いたまま戻ることはない。

でも、ここであきらめられない。

今、釣りをやめるってことは今年に入って凄腕年間GPをとろうと決めて活動してきた全てを一時の疲れで捨てるってことにつながる。

来年一からやり直すより今踏ん張ったほうが楽だ！

「よし！」と気合を入れてまた投げ続ける。

投げて　投げて　投げて　投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

鳴り止まないボイルに心を欲望に満たしながら投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

タイにかじられてボロボロになっていくサヨリスそれでも投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

体温低下と疲労に立っていられず座り込んで投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

投げて　投げて　投げて　投げて。

頭の中はもう真っ白で「とりあえず帰ったらビールを飲む。」とかなんとか思っていて。

カッ！

突然のバイトに冷えきった体に一気に熱が入る。

「うおおおおおおおおお！！！！！！」

ガッツリとアワセを入れた瞬間。

「重い。」

クラッチレバーを切り慎重に間合いを詰めていき押せば引き引けば押す地獄のファイトを繰り広げる。

やっと水面に浮かんできたのはゴン太りの魚体。

アミを入れる瞬間「ここでトラブってしくじったら・　　・　・　・。」

と、いつも不安になる。

が、まあ成功するよね。

重量をあじわいながらアミをたぐりメジャーを当てると80ジャスト。

キーアイテムがポッケの中で濡れてグジャグジャになっていた。

とにかく現地で作成し撮影。

時間が立ちすぎリリースに失敗してしまった。



iPhoneの時計は４時を示していた。

俺１１時間投げきったよ。

今回は、思いがむくわれたがいつもこんなに上手くはいかない。

むしろ、疲弊しきって得るものはなく失うばかりの日の方が多い。

それでも釣り続けよう。

過去の自分はしんどいことをしっかりやってくれた、そのおかげで今がある。

今の俺は、未来の俺のために出来ることを精一杯やろう。

過去の俺との約束、年間GPをつかむまで後２ヵ月。

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