父より息子への手紙

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前略

友草 海太 殿






一年前のキミは

今よりもとても小さく

自信のある表情をしていても

どことなく脆さがあり

ライバルの子の前で

なす術もなく、ただただ悔し涙を流すだけだったね。




 


悔し涙に塗れたその視線の先には

恥ずかしさや底しれぬ恐怖を押し殺して

完膚無きまでも叩き潰されたライバルの道場への出稽古を決意していたね。



 


当然、出稽古先の道場では

同学年の子たちから練習でボロ雑巾のように取っては投げられ

涙と血と汗に塗れて一生懸命頑張ったね。




少しでも強くなりたいキミは

昨年のGWは格闘家

菊野克紀先生のセミナーにも参加して大いに刺激を受けましたね。









 


出稽古にようやく慣れた時に

この地区には口蹄疫という災害が降りかかり

キミたちにも多大なる影響を受けましたね。

 


2ヵ月に渡る練習の自粛。






 


せっかく柔道が何か理解をし始めた時の出来事。

キミたちは大きなショックを受けましたね。

 

 

しかし夏になって

規制も解け練習が再開されると

水を得た魚のように夢中になり

貪欲に「強さ」を求める為猛練習に励みましたね。



 

 

いつしか実力差のあったこの道場の子たちとも絆が芽生え

本気で道場の移籍を考え始めましたね。





西警」と刺繍された道着を着て

すっかりひとつになった仲間たちとともに闘いたいと思いました。

 


4月の時点では最弱だったキミも

前の道場で最後の大会で

無差別級地区大会2位という成績を収め

流した汗と涙が大変意味のあるものだった事を知ったね。




 

 

そして10月

念願の西警の道着に袖を通し


 

更なる頂を目指し始めた時に出会った

軽量級県チャンピオンとの対戦







地区大会では2位のキミも

開始僅か10秒で一本負けを喫し


 

自らの実力差をまざまざと見せつけられましたね。

 




 


その時のキミの涙を父は忘れません。

一年前の涙と違う

確実に更なる上を目指す為の悔し涙を。


 

 

その後、父は道場で指導する立場にさせていただき

文字通り

連日、親子二人三脚で猛練習に励んだね。









 


そして県王者に辛酸を舐めさせられた僅か一ヶ月後に

団体戦の準決勝、先鋒対決で再戦させていただいたね。


 

前回秒殺させられた試合とは違い

キミは必死に王者の猛攻を凌ぎ

二年連続県王者をあと一歩のところまで追い込んだにも関わらず

ラスト17秒で再び一本で投げられ負けてしまいました。





 

 

その後キミは父から思いっきり殴られました。








キミが団体戦に出場する事により

出場できない仲間がいた事


 


そしてあと僅か17秒頑張っていれば

誰もが予期してなかったあの王者から値千金のドローとなり

後に続く中堅、大将の仲間たちにも大きなパワーを与えられていた事



 


ましてやいつも意識していたあの王者に再び一本負けを喫してしまったキミのプライドの事


 


それらの事を考えるとキミを殴らざるを得ませんでした。




 

あの時の殴られたキミの痛み

父もあの痛みは忘れません。


 

 

そして連戦、連戦





 

定期的に行われる県内外を問わない試合に進んで参加しているうちに

キミはいつしか逞しく成長しました。






 


そして3月末

キミが一年前、今の道場に出稽古を決めたあの大会で

同じ道場の今まで目指してきたライバルの彼からついに初勝利

父も嬉しい一勝となりました。






 

 


そしてその勢いのまま決勝進出


 


県重量級2位のうちの道場エーストキアと対戦しましたが

やはりトキアの壁は破れず

旗判定で惜敗の準優勝





 


実に惜しい負けでしたが

体重差20キロでの闘いぶりは立派だと思います。








 

 

そしてGW初日に開催されたキミの最も目指していた大会

宮崎県少年柔道体重別選手権大会






 


3年生で27キロと軽量なキミにとって

やはり無差別級での大会はリスクが高すぎます。

 


体重別での大会はより公平に優劣をつけることができる

数少ない大会

 


もちろん

あの2年連続県軽量級覇者のあの王者も第一シードで待っている

 

 


・・・はずでした。

 

 

 

キミはいきなり目標を失いましたね。



 

なんとディフェンディングチャンピオンは病気の為欠場

3回戦で対戦するはずだったのに

あの時はとても残念に思いましたね。

 

 

しかし、王者へのリベンジはまたの機会にするとして

急成長を遂げたキミにとって

今回は有利優勝を目指せる大会となった



・・・はずでした。



 


3年生の軽量級は全学年の中で参加人数が最も多く激選でしたね。

しかし厳しい練習をしてきたキミにとって

連戦は問題なかったはずです。









 

 

一回戦は僅か10秒で背負い投げ一本

半年ほど前は引き分けた相手に見事な背負いが炸裂しました。


 

あれは見事でした。

父はこの瞬間、キミは優勝できると確信しました。


 

 

二回戦は2年生の時の重量級3位の選手


 

しかしキミはその大柄な選手を終始圧倒しましたね。



 

相手はキミの猛攻に手も足も出ず

指導も取られました。




 


ポイントを取るのも時間の問題だったはずです。



 


しかし
 

思わぬ所に落とし穴がありましたね。


 


背負い投げをかけて

そのまま寝技に入ったと勘違いしたキミは

迂闊に相手の片足を取りに行きました。

 





相手は膝をついていない状況なのに・・・




 


昨年から少年柔道のルールも国際式のルールに変わり

立ち技における下穿以下を掴む事は一発反則負けになるという事は知っていたはずです。

 



勝っていた試合を

自らのミスによる一発反則負け

 

 

父はキミが相手の足を掴んだ瞬間

それまで優勝という文字がちらついていただけに

大きなショックを受けていた事を思い出します。


 


なおもショックだったのは

キミが圧倒していたあの選手はそのまま勝ち上がり

準優勝

優勝した選手もキミほどあの選手を圧倒している印象はなく

2対1のスプリットで僅差判定






もしあの決勝の場でキミの姿を見れていたら・・・

 





むしろあの時はキミよりも父の方が悔しかったのではと思います。

 

 

 

その後もGWは柔道の遠征の日々でしたね










 

都城の大会では準々決勝でこれまた不動の王者

県重量級3連覇の選手と対戦しましたね。


 

 

キミの武器であるスピードとスタミナで

王者を翻弄する予定でしたが










 

やはり体重差が倍の王者との闘いには無理がありました。





 


ずいぶん久しぶりに見た

キミが抑え込まれての一本負け







 


ウチのエース、トキアでも勝てない

やはり彼は強い選手でした。

 

 


しかし

強い選手との闘いの中で

確実にキミは強くなっています。



 

一年前のキミからすると

別人になったような気もします。

 

 

いつも練習の時、厳しく接するスパルタな父を許してください。

練習中覇気のなかったキミを張り飛ばしたり、

帰りの道中車から降ろして置き去りにしてゴメンね。


 

 

父は

決してキミが嫌いな訳ではありません。



 


キミが目標とする上のステージでの栄光へ

夢を達成できるように

心を鬼にして厳しく接しているのです。


 

 

柔道の練習をしているおかげで

キミの身体はいつしか逞しくなり

新しい学校での体育の授業でもとても目立つ優秀な生徒だと

担任の先生から聞きました。

 

偉そうな事ばかり言う

厳しい父ですが

若い頃、柔道でも体育の授業でもあまり目立っていた

存在ではありませんでした。

 


だからこそ

素直にキミの活躍を父は誇りに思います。

 

どんな事があっても

父はキミの味方です。


命をかけてキミを守ります。


 


一生懸命働いて

キミが我が家を旅立つその日まで頑張ります。

 


あと何年、こんな親子の関係が続くかと考えれば寂しい気もしますが

今は一生懸命、学業に遊びにそして柔道に頑張ってください。

 

 

いつも素直で一生懸命なキミが大好きです。



 

 


2011年5月吉日  父 友草 清一

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