鮒に終わるという事

  • ジャンル:日記/一般
親父の知り合いの話。



昔名古屋でエサ屋を営む店主の話。



その彼は、鮒釣りが好きで暇さえあれば池へ行き竿を出していた。



名古屋で初めて生きエサを商品にした彼の店はもの凄く繁盛していたらしい。



北に行くにも南に行く釣り人も、そのアクセスと海沿いでもないのに生きエサがあるという理由でそこを利用していたらしい。




彼は寝ても覚めても鮒釣りの事を考え、フィールドに通い詰め鮒釣りをする。



子供の頃から慣れ親しんだ池での鮒釣りが彼の癒しになって、生きがいになっていったんだと父親は話してくれた。



誰にも訪れる死が彼の上にも来た。



彼は布団の中で鮒を掛け、タモを構える姿で亡くなっていたらしい。



俄かには信じがたい話ではあるが、それぐらい鮒釣りに魅せられて鮒釣りを極めんとした彼は多分人生を幸せなまま終えたのだと思った。



父親と酒を交わしながら40になる自分が人生をどのように終えるか終えたいかを笑いながら考える素敵な時間だった。

コメントを見る