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暖かく雪が降った

  • ジャンル:日記/一般
 昨晩は湾奥に、仲間と二人で釣りに行った。
寒いには寒いんだけど、風もなかったので早春のポイントを足早にチェック。
 
割と何時も会ってるようだけど、実は2人で釣をするのは久しぶりで、いろんな話しに花が咲いた。
やはり楽しいのは、これから進めなきゃいけない事の話で、24時を回ったのも忘れながら、めぼしいポイントを各所周ったが、残念ながら狙う魚からの反応は得られなかった。
 
それでも、もう少し・・・という気持ちは無くはないけど、最後は遠くでパトカーのサイレンが止まったのをきっかけに帰る事とした。
夜の港湾遊びの閉め時としては、ちょうど良い。
 
彼を家に送り、じゃぁ次は大阪で!と合図し、湘南の妻の実家へと車を走らせた。
 
深夜の首都高湾岸線は風速2m。
左手に見える横浜港の貨物船が照らすライトの中に、スズキのボイルが無いかと探しながら。
 
湘南で少し寝て、2時間後には埼玉へ帰る為の車に揺られていた。
僕が乗るこの車は少し距離を走りすぎているから、3.11以降の第三京浜の路面のギャップを的確に車内へ伝える。
 
助手席で気絶する僕を気遣ってか、それとも後ろに乗る子を気遣ってか、妻は気持ちゆっくりと多摩川を渡った。
 
その辺りで気絶したのを覚えている。
 
 
1時間後、埼玉の我が家へ。
当然、夜明け直前の木造35年の一軒家は凍り付き、うかつに3歳児などは入れることは出来ない。
 
妻は車のエンジンを掛けたままにし、一人家の中へ入って行き石油ファンヒーターに火をともし電気をつける。
 
僕はもちろん、わが子と一緒に車の中で睡眠を貪るのだが、無常にもわずかな時間で陽は昇り、日常的な時間で目を覚ました我が子は容赦なく「ち~ちぃ、昨日は釣れたのか?」と。
 
毛布でくるみながら抱きかかえ、妻が暖めてくれた部屋へ入った。
しかし、ソファーに座るとまた眠くなる。
 
出社まで40分ほど。
目を覚ますために風呂へ入ろうと、給湯のスイッチを押す。
まどろみながらも見ていたTVでは、今夜は雪のニュースが流れていた。
 
どうせ先週と一緒で、積もりはしないでしょ。
 
 
月曜の朝礼で何を言ったかは覚えてない。
ただ、週中には大切な会議があるので、その資料作りに追われたのは覚えている。
 
 
昼ごろにハルシオンシステムから電話が入った。
来月の大阪フィッシングショーの打ち合わせをしようとの事。
 
この手の打ち合わせは早いほうが良いと判断し、今日の夕方に仕事を終えたら向かうと告げた。
 
外は雨。
 
定時に職場を出たら、やたら道が混んでいた。
なんだかみんな、急いで家に帰りたいみたい。
夕闇の中、フロントガラスに落ちてくる雨は、少し重たそうな音がしている。
 
少しいやな予感がしたので、ハルシオンシステムに遅くなる事を告げてから、ガソリンスタンドへ入り満タンにしておいた。
いざとなれば、車には釣り道具が全て入ってるから、防寒着を着込んで夜を明かす事はできる。
ただ、二晩連続なのは少し気が重いけど。
 
いつもよりも時間が掛かって到着したハルシオンシステムでは、社長と事務からルアー組み付けまで全てこなすお姉さん(と、しとく)が笑顔で迎えてくれた。
 
打ち合わせは順調に進み、お姉さん(と、しとく)は子供を迎えに行く、と、一足先に事務所を出た。
 
社長と、これからやりたい事や、大阪の話を進める。
何時も思うけど、この手の話しをしてると時間が経つのが早い。
それはきっと、人は明るい未来の話しが好きだからなんだと思う。
 
そこに、さっき帰っていったお姉さん(と、しとく)から、社長への電話。
 
「工藤君、もう帰ったほうが良いって!!」
 
外へ出て見ると、一面が銀世界・・・
 
あれ?
積もんないと思ったのに。
 
早々に挨拶をして別れを告げ、ハルシオンシステムを出た。
 
まずは下り坂。
この程度なら何とかなる。
 
通常、空いてると20分で帰れる道のりだけど、すでにスタッドレスではない車があちらこちらで立ち往生をしている。
 
そこに並べば、深々と進む時間であっという間に雪は積もり、たまにしか踏まれる事のない雪はアイスバーンとなる。
 
時間との戦い。
交通量がほどほど多く、しかも坂が無い道を探す。
 
ナビはやがて、動けなくなった車のために、各線を赤く染め出した。


R463。

通称、浦所線に出れば、まったく車が居なくなる時間まで待ってから2車線全てを使って家に帰る事ができることを知っている。
そういえば、去年この時期にやった。
 
朝霞の街は、2本の川に挟まれているため、やや台地のような形になる。
 
ハルシオンシステムからの帰りは、どうしても谷を避ける事はできない道のり。
 
いや、実は、R254に逃げればそれも無いのだが、もっと恐ろしい線路を越える陸橋を使わなくてはならない。
 
まずは、なんとしても、川を越えなくては。
それも、積雪がアイスバーンになる前に。
 
スタッドレスタイヤなどというおしゃれなタイヤは履いてない。
確か去年は首都高速の出口で震えてたっけ。
 
明らかに僕の車は遅い。
ガソリンを満タンにしておいたから、リヤタイヤのトラクションが抜ける心配をしなくてもいいのが救い。
 
しかし、逆に言えば、その重さは急に止まれないとも言う。
 
やがて目の前から車がどんどん居なくなり、雪道をひた走るのは僕だけになった。
 
まずいゾ・・・
トラックが作ってくれる、わだちが無くなった。
 
坂道の途中の交差点は、すでに動けなくなった車にふさがれ、なんとしても止まりたくない僕の葛藤は、ついに道の選択を誤らせた。
 
あ、こっち行ったら、陸橋しかない!
 
一方通行を無視するという手段もあったけど、気がついたら目の前に大きな陸橋が立ちふさがっていた。
 
頂点の向こう側は、
この登りと同じ下りがあることは知っている。
そして確か、信号もあった。
 
いいんだ、登りは。
でも、その後は笑えない。
 
山頂はすでに吹雪いていて見えない。
 
僕はアイゼンも無しで雪山を登るほど、酔狂なまねをできる人間ではなかった。
 
登山道入り口を左折。
 
そこは朝霞台駅の直ぐ目の前。
 
最大1000円のコインパーキングへ車を止め、サバの血の着いた長靴を履き、潮でガビガビになった防寒着を着込んで、東武東上線の駅へと向かった。
もちろん安っぽさを必要以上に演出する、白と透明のビニール傘には赤い錆が浮いているのを見逃さない。
 
そういうのが恥ずかしくない年になったのは良い事だと思う。
明日の朝まで、車上荒しにあっていない事を祈る。
 
少し遅れてきた電車は、冬の閉塞感が色濃く出る雰囲気。
 
途中、柳瀬川駅を過ぎた頃、通過する予定だったR463を車窓から覗く。
国道に出る為に通らなくてはいけない、柳瀬川を渡る橋とそこから続くコークスクリューと呼ばれる下り高速S字コーナーは、見るも無残な事になっていた.
 
この選択は間違いではない事を確信して、少し明るい気持ちになれた。
 
カバンに入っていた文庫を読んでたら、あっという間に鶴瀬駅へついた。
タクシー乗り場の最後列はすでに、屋根からはみ出ているけど気にせずに並んだ。
 
傘を差しながら、深々と積もる雪につぶされそうな思いで、また文庫を取り出して読みふけった。
 
十数分(一章を読み終えたから、おそらくそれぐらい)が経ったが、一向にタクシーは来なかった。
我が家はこの駅からは2メーターの距離であるから、ちょっとこの雪道を歩くのは忍びない。
 
そこへ、タイミング良くバスが来た。
日本最古の会員制バスは、今は誰もが乗る事のできる生活に欠かす事のできないバス。
 
この小さなバスは住宅内を走り、時に同じ会社同士で正面衝突をしたり、態度の悪い運転手と乗客がケンカしたり、遠くから「乗りま~ス!」と走ってくるおばあちゃんを無視して発車したりと、書けばきりが無いほどの悪名高きバスではある。
 
学生の頃、奇特にも僕の住んでいた家に遊びに来たいと言った友人の全員が、強烈なこのバスのドラテクを思いに「工藤の家に行く時は気をつけろ。つり革を離したら死ぬぞ」と真顔で言っていたものだった。
もっともこのバスは会員制であった為、「一般的なお客様は要りません」という明確なスタンスをもっていたのだと思う。
 
でも、そのバスは、今は一般的なバス。
久しぶりに乗る事にした。
 
バス停に屋根が無い為に、方々の屋根の下に隠れていた乗客が一斉に駆け寄る。
僕は慌てる必要も無かったので、ゆっくりとその列に並んだ。
その後ろには、傘も持たない小学生の男の子が一人。
 
案の定、このバスは腐ってた。
「両替機、壊れてま~す」
 
運転手は、そう言って、運転席から降りもせずに、両替を拒む。
しかし乗客は、次から次えと暗くジメジメした車内に押し込むように入るとする。
 
前に並ぶ人に聞くと、今は運賃が210円だそうで、僕は昔「早くしろ!」と運転手に怒られたのを思い出したので、財布の中を見てやたら細かいコインが沢山入っているのにホッとした。
 
僕が乗り込み、後ろの小学生が両替機に千円札を入れようとした。
そして無常にも、「壊れてます」とだけ、運転手が伝えた。
 
小学生は110円だそうだ。
でもその子は、1000円札しかない。
 
雪の為、異様に張り詰めた小さなバスの車内。
全員が心の中で、またかよ・・・と思ったに違いない。
 
僕は、今までにこういうのを何度か見てきた。
10数年立っても変わらない何かがあるんだな。
それにはちょっと驚いたけど、むかしからこうやって運転手はいやそうな顔をしていたし、僕も何度も両替の時にケチを付けられてきた。
そして乗客の視線の冷たさも感じていた。
 
その小学生は、なんだかその頃の僕のように見え、つい財布を取り出して小銭を数えた。
ふと、僕の前に座っていた目つきの悪い中年の親父も、財布をポケットから取り出したようだった。
どちらが・・・という事でなく、同時に。
 
僕は立っていたから、先に少年のところへ行った。
少年は、運転手に「バス停にお母さんがお金を持ってきてくれるので・・・」と、搾り出すように。
 
運転手は、何も言わずに自動ドアを閉めて、バスは雪道をゆっくりと進んだ。
 
「何処のバス停で降りるの?お母さん、来てくれるのか?」とたずねると、「郵便局前です・・・来てくれると思います」と、少年は答えた。
僕は「そうか」とだけ答え、財布から110円を出して、少年の後ろに立った。
 
暗く吹雪く雪道を慎重に進み、バス停に付くころ、向こうから一人の女性が傘を手に持って走ってくるのが見えた。
 
「おかあさん?」
「ハイ!」
 
バスは少し長くバス停に止まり、やがて無事に走り出した。
 
僕は財布にコインを戻し、カバンに仕舞い込んだ。
横目にははっきりと、あの少年が雪の中で頭を下げているのが見えた。
お母さんは訳も判らず。
 
手を振る暇が無かったから、会釈だけして返した。
 
やがてバスの中にあった緊張は溶け出し、バス停が来るたびに乗客は降りていった。
R254は、完全にアイスバーンとなっている。
 
おおきなショッピングモールの角を曲がり、いよいよ住宅内の細い道に差し掛かるころ、僕は次のバス停で降りるから、怪しく光るピンクのボタンを押して意思表示をした。
 
つり革にしっかりつかまりドアが開いた時、僕の前に座っていた目つきの悪い中年親父が、ちょっと照れくさそうに何か言った。
僕は、え?とした顔をすると、「お疲れ様」と、もう一度言い直してくれた。
 
「あぁ、
お疲れ様でした」
 
と、僕は笑顔で告げて、バス停に降り立ち、人気の無い静かな住宅内へ。



 
雪道は暖かく、少しゆっくり歩いて帰った。
 
タバコを車に置いてきてしまった事を悔やみながら。

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