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もう狙えない 2

  • ジャンル:釣行記
そして今、真っ暗闇の山中に居る。
プチ遭難。
 
ヘッドライトの電池が切れたのが切欠。
たったそれだけの理由だが、山では命取りのミス。
 
 
高速乗って数時間後に入口へ車を止め、山道を歩いている間に日が翳ってきた。
 
何時もの危ない崖を降りたころに、全身を闇に包まれる。
とりあえずは難所を越えたことに一安心し、後は沢伝いに降りていき、ヒラキに出れば魚が入ってくるポイントまではすぐ・・・
 
の、はずだったとこで、電池が切れていることが発覚した。
前回干潟釣行に行って、後ろの赤い点滅灯のスイッチを切り忘れていたのだ。
 
この時期は、日が落ちると気温が一気に下がる。
雪解けの水が冷たい事を予測し、装備を真冬のウェーディング仕様にしてきたのが、かろうじて生きている理由になっている。
 
残念でならないのは、沢が数年前とは大きく様子を変えていたこと。
そしてたぶん、このルートは間違いだ。
 
自然のままのフィールドは、数年もすれば大きく様変わりしているのが当たり前。
 
恐らく去年この辺りへ大きな被害をもたらした台風の影響で、大量の山土が運ばれてきたのだろう。
 
例年ならこちら側の山肌からエントリーし、沢沿いに下ればポイントへ出れるのだが、今は沢を渡らなくては、下流へ出ることができない。
 
しかし、この暗闇。
地形把握無しでは危なくて渡ることができない。
 
渡っちまえばヒラキだから、釣りはできる。
どうせ何時間もの足止めを食らうなら、せめて釣りぐらいさせて欲しい。
 
いくらバスがバックウォーターの奥深くまで登るといっても、さすがにここまで登るバスは居ない。
 
やっちゃったなぁ・・・
 
対岸に見える白い残雪を見ながら、タバコに火をつけて流木に腰を下ろした。
その木は、意外と乾いてるようで、少し暖かく感じた。
 
この闇じゃ、後戻りして崖も登れない。
せめて満月が山の隙間から登ってくるまでは動けないか。
 
 
まだ20時ぐらいだろう。
どうせ通じない携帯は、車のバックシートに置いてきた。
 
東京湾ならとっくに月が登っているが、山間では山の陰になってしまいかなり時間が遅れる。
 
 
闇夜の山は暇だった。
 
オマケに、動かないから寒い。
防寒着を着ているからまだ良いが、もしもコレがゴアテックスの春物のアウターだったらと思うとゾッとした。
 
 
大声で、歌を歌ってみた。
初めはブルーハーツの少年の詩だった。
 
この曲をはじめて聴いたのは、14歳の時に行ったライブだったかもしれない。
 
当時、ブルーハーツはパンクか否かで仲間ともめた時、最後に「いや、やっぱりパンクでしょ・・・」となったのは、この曲の最後を締めくくるこの言葉からだった。
 
 
~~~
そしてナイフを持って たってた
そして!
いろんなことが
おもいどおりに
なったら
いいのになぁ・・・
~~~
 
ナイフを持って立ってた先にこの言葉が在るのなら、もはやそこに秩序は無いだろう。
 
ナイフついでに次は、MODSのTwoPunksを歌った。
 
~~~
もう朝6時だ
家を探さなくちゃ
俺達は実際 金が無かった
ポケットの中には キラリと ナイフが
さぁ歩こう 街は眩しすぎる
~~~
 
そもそも、腹が減ってナイフを持ってるのは、狩人としてはかなり正しい姿だ。
本来は、人の創りし生きる為の道具。
 
しかし、パンクロックでナイフが出てくると、恐ろしく貧乏臭い上に危険な香りがするのはなぜか。
 
人は環境で大きく考え方が異なる。
 
ブルーハーツ、モッズと来た。
次はARBだろうと思い、ARBでもナイフが出てくる曲あったよなぁ・・・と、
 
ナイフナイフナイフ・・・
ジャックナイフはナイフじゃないし・・・
 
あ!
そういえば、ポケットの中にナイフ入ってた気が!
 
急に思い出して、ライジャケの防水チャックの中をゴソゴソとやると、手に少しばかりの重みの在るナイフが触った。
 
そして座っている流木を、ナイフの背でゴリゴリと削りながら屑を作った。
風が吹いてないのが救いだった。
 
なんとなく集まった屑へライターで火を灯し、枝をくべると・・・
綺麗に闇は追い払われた。
 
当然口ずさんだ曲は、ARBの魂焦がしてだった。
 
~~~
家も 町も 遠く離れて
一人道を走る
ボクサーのように闇切り開け!
魂 焦がして
~~~
 
見る見る間に燃え盛る焚き火。
魂どころか、釣り竿が燃えたら大変だ。
 
しかし良かった。
私は、あっち側のナイフ使いではないのだ。
周りの木々を集めるほどに、生きている実感が増して行く。
 
数年前に仲間が書いた、焚き火を主題にしたブログ記事があったことを思い出す。
山岳渓流で怪我人を出し、救助された時に見た待ち人の焚き火の美しい話し。
 
しかし、私の焚き火に、待ち人は居ない。
 
なにせ、物語の終焉の焚き火ではないのだ。
現在進行形の遭難。
 
そう思うと無性に悲しくなった。
 
そして無理やりに楽観的に考えた。
この明かりで沢を渡れるんじゃないか?
 
人の腕ほどの太さの木に、やっと火が燈った。
添加材を使っている訳ではなく、自然につけた火は本当に美しい。
 
その明かりを頼りに、沢を覗いてみた。
 
怪しく揺らめくその流れは、ちょっと深そうだが行けない深さではない。
幅は3mほど。
 
意を決して、焚き火を消した。
火は、手元に在るこの松明のみ。
 
沢の中で転んだら終わる。
 
何時ものヒラスズキの瀬渡りの時と同じように、帽子の中にライターをしまいこんで一歩目を踏み出した。
 
腰水位を切り、ギリギリで渡る。
この場所は長靴で昔は来ていたが、ハイブリットウェーダーで本当に良かった。
 
やや流されたが、無事に着岸。
しかし、沢を渡りきった時の充実感は、同時にもう1つの敗北感を伝えた。
 
そこは中州だった。
ポイントまでは、もう一本の筋を渡らなくては入れない。
 
松明の明かりを頼りに、足を踏み入れた。
明らかに深く、しかも底砂がフカフカで危険。
 
手詰まりか・・・
 
後ろを振り返り、もう一度沢を渡って崖を上ることを考えたが、松明とロッドをもって登れるほどは甘くないことは知っている。
 
生き物のように燃える松明は、たまに金属的な弾け方をする。
この山奥で一人と言う事を実感させるのに十分な躍動感。
 
砂にそれを立てて、周りの薪を集めた。
冬のリザーバーは常に水位が下がっているから、流木が乾いているのが救い。
 
一晩で2回も焚き火をするとは・・・
苦笑いをして、中州に座り込む。
 
コレが夏なら、降雨量の多いこの場所には恐ろしくて留まれない。
しかし冬は冬で、寒気が体温を奪っていく。
 
結局は、暖かくなってきた4月が一番いいよね。
昔から、早まって3月に釣りへ行くと、そこで疲れて4月のやる気がそがれる。
 
サクラが散ってからの釣り。
このリザーバーは標高が高いから、4月中旬からが何時もの開幕だった。
 
ただ、あのカツオが獲れるなら・・・
今はその衝動だけで生きながらえている。
 
やがて東の稜線が、銀色に輝きだした。
月が照らす山並み。
 
後数分で、月がこの中洲を照らしてくれる事だろう。
 
そうすれば湖面が見える。
今夜はカツオのポイントへは入れないだろうが、中洲の終り際のブレイクについた魚を狙うのもありかもしれない。
 
 
だけど・・・
 
だけど、と、思う。
 
ココまで来て、その魚で良いのか。
 
怪しく揺らめく焚き火を見ながら、少し考える。
 
 
その時、さっきまで居た崖の上、エントリーポイント辺りにライトの明かりが見えた。
 
釣り人が来た!
 
 
しかし、数分で、そのライトの明かりはまた山奥深くへ消えていった。
 
その意味は十分に解る。
そういうフィールドだし、ここはそういうアングラーがひときわ多い。
 
山深い沢が緑の淵に流れ込むその場所。
絶対に表には出てこないが、確実にその魚を狙って来た彼ら。
 
名前も知らないし、どこに住んでいるかも知らない。
馴れ合いも無く、フィールドで会うその時だけの仲間達。
 
そういうアングラーの中には、「あいつがあっちに入ったら、魚が居ても手を出しちゃダメだろ」という暗黙の了解が存在する。
 
恐らく、エントリーポイントから見えた焚き火を、先行者と判断したのだろう。
そのライトの行く先は、ここからさらに1時間は歩く、本湖へ続く登山道だった。
 
まぁ確かに、先行者でもあり、遭難者でも在るのだが。
 
 
月が川面を照らし、今居る場所の大まかな地形が見えてきた。
思ったとおりに、数十メーター下流で中洲は無くなり、バックウォーターとして湖へ注いでいる。
ただ、そのバックウォーターの運ぶ砂が作るブレイクにはフルキャストでも届かない。
 
もしも今が夏で、夜のこのタイミングならば、バスはこのシャローへあがるだろう。
が、さすがにこの水温では可能性は少ない。
 
また、カツオが現れる場所は、水辺を歩いて岬を1つ越えた場所だ。
 
朝までの足止め。
まだまだ、長い時間が在る。
 
少し横になった。
 
思えば昔は、こうやって湖岸で眠る事も良くあった。
金はなかったが、時間だけは無限だと思っていたあの頃。
 
今は、人並みの生活を手に入れたが、代わりに失ったのはこういう時間かもしれない。
経済が対価の上で成り立つというなら、決して今のポジションに後悔などは無いのだが・・・
時々、本当に時々、あのころの感覚へトリップする時が在る。
 
根本的な反逆の心。
 
その危険性に気がついてしまった時点で、純粋なレジスタンスにはなれないことも知った。
15年前の私が今の私を見れば、恐ろしく悲しむことだろう。
 
 
何時間がたったのだろうか。
 
手入れをしない焚き火は炎を失った。
その様子を眺め続けると、山に吸い込まれる不思議な感覚に落ちた。
 
もうすぐ終わるんだな。
 
残るのは、赤くマグマのような炭火。
天井には緑色の月。
 
うつらうつらとし、やがて眠りについた。
 
 
 
 
つづく

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