プロフィール

小川健太郎

南極

プロフィール詳細

カレンダー

<< 2024/4 >>

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

検索

:

QRコード

ogawakentarou twitter

ツララjp

小川健太郎釣りペイジ


counter_img.php?id=89031498

イトウのリリース

まずはじめに、前提を三つ。
★リリースで最も大切なのは、人間側の安全確保。
★ある程度のサイズのイトウは丈夫な魚であること。
★ラインブレイクのほとんどは『触ってリリース』より生存率が高い。

第一前提ですが、人間側が安全でなければ、釣り禁止になる日も近いでしょう。
また、イトウには歯がありますので、口に酸素を入れる際には気をつけるべきです。
ランディングにネットやギャフを使うことも、よく物議をかもしますが、
安全面という意味では非常に大切です。
魚の着地地点がコンクリだろうが草の上だろうが、
人間が安全でなければならないと思います。
以前ロドリ誌でワタクシがバスを泥の上で引きずった連続写真があり、
そのへんでなんか物議があったらしいですが(笑)。
あれを泥の中に立ちこんで釣ればこっちは9割死ぬので、
何が正しいかは別として、行動としては間違ってないと思います。

第三前提はこれまで誌面でもどこでも、何回も紹介しておりますし
ちゃんとした場所で実験すればすぐに判ることなので省略します。
極端な話、釣れた直後に糸を切って足で軽く蹴っ飛ばしてリリースしたほうが、
大切にだっこしながらリリースするより生存率が高いわけで、
どの資料、実験をみても、見た目の美しさと現実の違いに驚愕するはずです。

さて、イトウのリリースについて。本題です。

イトウは瀕死のふりをする、と管理釣り場でも言われます。
リリースに時間が掛かる場合が多いのです。
通常、トラウトは触るほどに致死率が上がります。
これはイトウでも同じ部分があります。
しかしながら、河口付近ほど、その粘液の多さから、
多少の触れ合いはカバーできているように思います。

■目が上がる状態を回復する
また、トラウトでは『目が上がる状態』というNG状態があります。
★通常はこのように目が下を向いているものが佳しとされます。


で、同じ魚ですが、今回の釣行写真でよくみられるこの状態。
★目が上がった状態です。


釣り雑誌においては、この状態になった魚の写真は使われないことがほとんどです。
原因は酸欠や環境温度上昇があり、温泉地帯の渓流魚などは
最初からこの状態で釣れることもあります。
これらは酸素が原因であれば、しっかりと蘇生することで復活します。
まずはこの、目が戻れば泳ぎ出すのは間近ですね。

■体色の回復
次に体色です。
体色としては川と海で若干違いが見られました。
婚姻色となる赤い色は今回一切考えないで下さい。
そうですね、頭のあたりの色がわかりやすいでしょう。
まず、釣ったばかりのイトウは黒っぽい感じです。
これは個体差や先ほどの海と川の差があります。
まず、釣れた瞬間の体色を見て覚えておきましょう。
釣って撮影などをしたとき、イトウの色は体側部と頭頂部での差が少ないほど
薄く白っぽくなります。
こまめに水の中に入れておけば大丈夫というわけでもなく、
さらにはこの巨体で暴れるので、人間側も心して向き合わなければなりません。
★体色が薄くなったイトウ

このまま逃がしてしまうと十中八九腹を見せて死んだ振りをします。
死んだ振りだけならいいのですが、このときに口に藻やゴミが挟まったり、
不用意に泥に頭を突っ込んでしまうと、リアルに死んでしまうでしょう。
ここに蘇生をほどこすわけです。

同じ個体の魚ですが、これを蘇生するとこういう具合に戻ります。
★体色のメリハリが戻ったイトウ

正直この写真では全然わかりません(笑)が、
実際にこの写真のあと、逃がすまで10分以上酸素を与えていくと
随分真っ黒に変化していくのが全員にわかりました。


■蘇生方法
まず、手を濡らして温度を下げて下さい。
これは魚を触るなら、どんな場合であっても、
濡らした方が生存率が上がります。

今回の釣行に、グリップタイプのものを登場させました。
このタイプ、トラウト系では口を掴めない(外れる)ものが多いため
主流ではありませんが、このドレスのグリップを見た時、先端の返しでピンと来ました。
速攻でマミーさんに電話し、無理矢理会ってお借りしてきたわけです。

グラスパーという商品だそうです。

この先端の返しは、普段の使い勝手的には評判がよくないらしい(笑)ですが、
他社のものよりも何千倍も優れた部分があったわけです。
例えばグリップ全般に、ヒラスズキやサクラマスなどは
よく落っことしてしまうわけですが、
この返しさえあれば、後少しの差で持ちこたえてくれます。
多少皮膚を破くことがあったとしても、この傷は治りますし、
体表の傷に比べれば生命への影響は少ないでしょう。

さて、掴んでどうするかというと、口を開くわけです。
これが一番。
通常の尻尾持ち蘇生リリースでは、尻尾を持つことで手から体温を伝えてしまいます。
さらにはイトウをこうやっても、口を開かないため、
酸素は開いたエラの後ろから入ってくるだけになります。
なぜ口を持たないのか、それはもちろん『歯があるから』です。
じゃあ、やっぱりグリップのほうがいいですよね。
これで口を開いて、全面から酸素を取り入れることができます。
実際の蘇生時間は大幅に短縮されますので、参考にしていただければと思います。
今回のリリースをご覧になった全員が、その復活スピードにビックリされてました。
自力で泳ぎ出すまで、グリップを引っ張って口の中にフレッシュな水を入れ続けます。

また、手でおもいっきり持てる場所がしっかりすることも魅力です。
写真を撮る際に、危険な歯に怯えずともいいわけです。
暴れて身をねじることがあるので、このときだけは注意して下さい。
変に固定すると口が破れやすくなります。
しっかり掴むより、若干回る方向へ腕ごとずらして力を逃がし、
掴んだ部分に重みを集中させない方法、がコツになると思います。

撮影時の持ち方ですが、
グリップに甘えて完全に縦にぶら下げるのが一番マズイと思いました。
内臓に負担がかかるからです。
ボクがメーターで一回これをやったとき、幸い痩せていたから何事もなかったものの、
太ったメータークラスならば内臓をキープする膜が破れて死ぬことだってあるでしょう。
あぶないところだったと反省しています。

写真↓どんな魚でも縦持ちではこれがギリギリセーフです。
下から添えて分散持ち。魚も大きく見えます。

とにかくどんな魚でも、大きい魚に関しては、重心を分散させて持つ持ち方が一番です。


いずれにせよ、リリースは一尾ごとに時間のかかる作業となります。
ワタクシの四日目以降のように、ある程度釣ったら、
最初からフックを外してサイトで食わせて遊んだりしながら研究するほうが
面倒から開放されるのは間違いないと思います。

コメントを見る

小川健太郎さんのあわせて読みたい関連釣りログ