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Area?(第2章 騙し合い)

  • ジャンル:日記/一般


 

男は薄暗い路地を歩きながら、ある疑問に苛まれていた。

久しぶりの帰国に際してある程度の情報収集はしてきたつもりだった。

しかし、運転手との会話の食い違いが男を動揺させた。

「それにしても・・おかしいな・・」

収集源はFDI本部にあるスーパーコンピューターからである。

FDI本部では24時間リアルタイムで天文学的な数値の情報が集められ、解析されている。

その分野のスペシャリスト達が、あんなくだらない冗談のような嘘の情報を流すはずがない。

彼らの演算処理能力は世界随一なのだから。







イメージ画像
 

「待てよ・・まさか・・」

男は有り得ないとは言え、一抹の不安が過ぎった。

「いや、そんな事があるはずがない。システムもセキュリティーも万全だ。針の穴ほどのピンホールも
あるはずがない。」

自分に言い聞かせるように呟いていた。

不安・・それは最近良からぬ噂が組織の内部で囁かれている事を指していた。


(内部に情報を漏洩している奴が居るらしい)


ま、まさか・・鉄の結束の我々にそんな奴が居るはずが・・

 

 

 


「スパイか?」

 

 


男はスパイと言う言葉が嫌いだった。

エージェントの仕事に携わって早10数年・・

自身の仕事に揺ぎ無い地震とプライドを持って要る男にとって

「スパイ」と言う言葉はどこか、するがしこく、陰険なイメージが有ったからにほかならない。

「鉄の結束」とまで謳われた組織のメンバー。

男が席を置いてからというもの、死亡除籍以外は

入れ替わりがない。男を含めた数名の新し目のメンバーの中に・・

考えたくはなかったが「全てを疑ってかかれ」

男の師匠ともいうべきエージェントから教わった教訓。

「時には家族でさえも敵と見なして対応しろ。」

そんな風に教育されてきた。

 

自分の中で一気に緊張が高まるのを感じた。

 

それは、虫の知らせとでも言おうか、失われた感覚とでも言うか・・

背後を通り過ぎる車、ウォーキング中の初老の夫婦、電線に止まる小鳥・・

全てが疑惑の対象で、一歩踏み出すごとに緊張が増幅していく嫌なサイクルに陥りつつあった。

けれども、何時もそうして窮地を乗り切り命を繋いできた。

 

 


路地の突き当たり、薄っすらと明かりがこぼれる場所に数名の男たちが何かを待っていた。

男も静かに、けれどもより一層の警戒をしつつ列の最後尾に並んだ。

(いや、この連中の中にも・・)

表情には出さないが、心拍が早くなるのを悟られてはならない。

焦りや動揺は即、死に直結するタブーである事は百も承知だ。

落ち着いて辺りをジックリと観察する。

周りの人間達の銃や武器の気配を

感覚をマックスに研ぎ澄ませ察知する。

ちょっとした視線の動きや手元の動作までも見逃す訳にはいかない。

何しろ、奴らもプロ。微塵もそんな気配を出すはずない事を男は知っている。

真冬だと言うのに上気して、今にも汗が流れ出しそうなほどの緊迫した状況なのは

和やかに会話する列の中で、恐らく男だけだろう。

しかし、そんな状況に騙されてはいけない。

ここに居る全員が「敵」かもしれないのだ。警戒を解く訳にはいかない。

暫くすると男の番になったらしく、受付らしい室内へ通された。

殺風景な部屋の中は暖かく、カウンター越しに初老の女がしゃがれた声でしきりに何かを話している。

そのほかにもう一人、同年代の女が一人、中年の男が一人後ろ手に手を組んでいる。

その他にはカウンターの上に猫が一匹・・恐ろしくメタボなその猫は年老いているのであろう、まるで

来る者を品定めでもするかのような視線でぐるりと人間を見ると、また「フン」とでも言いたげに、

腰を据えて目を閉じた。男は随分その「化け猫」が気に入ったのか

頭を撫でてやると、うっとりとしていた。女は猫が可愛がられると嬉しいのか

上機嫌でスタッフとの会話も弾んでいる。

しかしだ。この雰囲気も怪しい。男は常に冷静だ。

そもそも、可笑しいと思わないか。

やはり、監視去れているのか?

いや、全てが筒抜けだったのか?

俺がここに来ることも・・

やはり、だとしたらヤバイ。奴等はここで俺を消すつもりなのか・・

この状況を冷静に分析してみる。

後ろ手に手を組んでいる男。

サイレンサー付の小口径の拳銃があの、後ろ手に。

しきりにカウンターの中を気にする女。中に恐らくサブマシンガンだろう。銃口は此方にむけられているな・・

そして、もう一人の女。笑顔でくる客に箱を手渡している。

その傍らにはテレビのリモコンらしき物がおかれているが・・

 

 

「っは!C-4か!?」」

 

 

 

 

 


思い出した。

あるミッションで同じような事があったのを。

その時はリモコンがプラスティック爆弾の起爆装置だった。

もう一人の女の役割。そう、起爆装置を操作する事だ。間違いない。

これで3人のおおよその役割が読めた。

問題はこれからの駆け引き。3人+銃数丁+大量の爆弾・・

一歩間違えれば木っ端微塵どころか、大勢の巻き添えも出るだろう。それだけはなんとしても

避けなければならない。流石のハイパーシールドもこの至近距離では

ギリギリ命を繋いでくれるかどうか・・

(いや、まて、これはあくまで俺の妄想だ・・)

テレビでは正月らしく

アイドルグループが歌を歌っている。

 

「AKBはいいですよね~お客さんの好みは?」

 

後ろ手の男が尋ねてきた。


(そう言ってテレビに視線を向けた隙に・・そうはいくか・・)


男は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「AKB?それがどれほどのクオリティーか知らんが俺は昔からCRCしか使わん。」

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「え?!エッ(゚Д゚≡゚Д゚)マジ?」

 

 

 

 

「潤滑+錆落しはCRCには敵うまい」

 

「エ━━━(;゚д゚)━━━・・つか、あんたの心の錆は落としてくれるだろうよ・・」

 

 

和やかな室内の空気は一瞬にして氷点下数十度の極寒の地へと・・

まるでダイヤモンドダストでも見るかのように目を細めて男を見ている。

そんな会話をしながらも

(まずは起爆装置を何とかせねばなるまいな・・)

起爆装置が無ければ、もう一人の女の傍らにうず高く積まれているC-4もただの箱。

しかし、手を伸ばせば届く位置にあるリモコンがやたら遠くに感じる。

(落ち着け、落ち着くんだ。チャンスは必ずくる)

「金が先だよ!」


後ろが閊えている事に業を煮やした初老の女が男を急かした。


「早いとこソコに必要事項を書いとくれ!」


カウンターには用紙とボールペンが置かれてる。

言われたとおりにボールペンを手に取ろうとした瞬間、

男は

 

 

 

 

 

 

 


「っは!これをカチッと押したら・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

あるミッションで

小型爆弾により右腕を失った

旧友のマイクのことを思い出した。

 

 

 

 

 


(そうはいくか!)

 

 

 

 


男は頑としてボールペンの芯を出さなかった。

「何してんだい!とっとと書いて桟橋にいきな!」

初老の女はイラつきだし、今にもマシンガンをぶっ放しそうな勢いで捲くし立てた。


しかし男は次のアクションも用意していた。

 

 

「すまんが、筆と墨を用意してくれんか。」

 

 

「は?ノ ヽ``~ 力_〆(・∀・)?あんた?」

 

 

「正月だからな。由緒正しくいこうと思う。」

 


「由緒なんか正しくなくていいから!早く書け!( ゚Д゚)㌦ァ!!」

 

 

 

 


何の気ないタイミング・・


そんなやり取りの途中、もう一人の女が

リモコンを手に取り、チャンネルのボタンを押してしまった。

AKBより、小林幸子が見たかったらしい。

 

 

 

 


「っば!っみんな!伏せろ!」


と、言ったと同時に横っ飛びに男は飛んで

中年の男のすぐ横に伏せた。

 


「どうしたんですか?」

 

中年の男が両膝に両手を付いて屈み込んで男を見つめている。

その手には、拳銃ではなく手袋が握られている。


(んな!しまった!あの女、いつの間にリモコンをすり替えたんだ!一瞬も目を離していないはずなのに!
この男の拳銃は!?)


男にしては珍しく冷静さを欠いているようだった。

「ふー・・」と息を一つ吐いて、ゆっくりと何事もなかったかのように起き上がると

初老の女が


「いいから、早く!」


と言って男にボールペンを差し出した。

芯は見事に出されていた。

 

(こいつら、相当の使い手だぞ!・・)


一瞬も気を抜けない状況で

まず、生きてここを出ることを最優先に作戦を組み立てる。

 

 


「っと・・まずは名前か・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


「いかりや長介」

 

 


 

 

 

 

 

 

 


「エ━━━(;゚д゚)━━━・・いい名前だね(・∀・)イイネ!!」

当然、実名は書かない。幾つもの名前や身分証も普通に使いこなすのが日常になっている。

 

 

 

 

 

 

「んと、住所・・は・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

「東京・・」

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

「スカイツリー」

 

 

 

 

 


「βακα..._φ(゚∀゚ )アヒャキミシンデお願い(人'д`o)」

 

「あんた!真面目に書きなよ!」初老の女の罵声が飛ぶ。

 


「わかった。手短に済まそう。実家の住所でいいか?」

「どこでもいいから!」

「ふむ。わかった・・」

 

 

 

 

 


「神奈川県・・」

 

 

 

 

 

 

 

「横浜市・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「らへん」

 

 

 

 

 

 

 


「(;゚д゚)ェ. . . . . . .らへんって・・アバウトすぎ・・(;゚д゚)ェ. . . . . . .」

 

 

「もーいいから!それ持ってとっとといきな!」


隣でもう一人の女が箱を渡そうとしたが、男は両手を上に上げ


「ちょっと待ってくれ、貰いたいのは山々だが箱の中身はいったいなんだ?」

(まさかC-4だとは言うはずないがな・・)

 

 


「ったく、いちいちメンドクサイ客だね!」


といってたらいも無く

初老の女は箱を開けた。

 

 

 


「皿だよ!」

 

 

 

 

 


「皿?」

 

(まただ!一瞬にしてあれだけの量のブツをすりかえたってのか!?まずいな。何としても生きて出なければ)

そして、受け取った皿を

どうするか暫し考え、取りあえず

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 イメージ画像

 

 


頭に乗せて見た。


「エッ(゚Д゚≡゚Д゚)マジ?ドシタノアンタ?エッ(゚Д゚≡゚Д゚)マジ?」


「いや、皿と言えば河童だろう。」

少し冷静を取り戻しつつある男は自信たっぷりの口調だ。


「脳ミソ(・∀・)㌧㌦!馬鹿の付きあいはもうたくさんだよ」


追い出されるように

表に出された。

 

 

 


明るくなった路地を桟橋に向かいながら

男は大きく「っぷー・・」と息をついた。


「しかし、あの危機的状況で死人が一人も出なかったのは奇跡に等しいな。」

 

 


朝焼けが男をオレンジ色に照らしていた。

 

 

 

 


第三章へつづく・・

 

 

 

 

 


 

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