プロフィール

のぶでござる

神奈川県

プロフィール詳細

カレンダー

<< 2024/4 >>

1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30
longinmonitor.jpg

検索

:

タグ

タグは未登録です。

アクセスカウンター

  • 今日のアクセス:121
  • 昨日のアクセス:99
  • 総アクセス数:453150

Area?(第1章 南へ・・)

  • ジャンル:日記/一般





2012







1月2日










AM3:00








男は空港のターミナルで疲れた表情を浮かべていた・・そもそも、深夜のフライトは漆黒の海を泳いでいるかのような妙な恐怖感があり好きではなかった。
気が付くと男を牽制するかのように
複数の空港関係者らしき者たちが3人・・4人・・
空港警備員の姿も数名確認できる。
(この時期のこの時間に、この格好だ。警戒されても無理が仕方ないな・・)
人も疎らな深夜の空港。
ひときわ異彩を放つ男のスタイル。
目立つなと言うのが無理な話だ。
「よし・・」
ぐるりと回りを見渡し椅子から立ち上がった男に
意を決したように歩み寄るスーツ姿の人物・・
責任者らしきその人物は男のつま先から頭のテッペンまで視線を流し
「どうしました?」
と、いかにも事務的に冷ややかな態度で男に言った。
(面倒は早いトコやっつけて、正月だしな・・)

「いや、今行くところだ。」

男が言うと

「あ、そうですか・・」

責任者らしき人物は男を一刻も早くターミナルから排除したかったようだが、男のスタイルを見て
少々の不安が過った・・


「大丈夫ですか?」



「ん?外に出るのに何か問題でも?」


「いえ、その装備で・・大丈夫かと・・」




男は失笑した。


極寒のヒマラヤ・・



砂塵の湾岸戦争・・




熱帯ジャングルのベトナム・・







何時でもどんな時もこのスタイルで
「修羅場」と言われた窮地をすり抜けてきた・・







傭兵時代








米兵のマイクが

男に尋ねた



「Hey!おまえはWHY?裸なんだ?」





「二度と一生服を着るなと言われてるからな」







「WHAT?WHY?」





 





「さあな・・これが俺の生き方だ。」


「そんな装備で弾が怖くないのか?」



「弾が恐い?ビリー、弾が俺に当るんじゃない。弾が俺をよけていくのさ。」





勘違いするんじゃない。人は贅沢に成りすぎた。
色々な物を造り出し
色々な物を壊してきた。
たった百数十年先の未来の地球が
想像出来なかったとでも言うのか?
宇宙へ行くテクトロジーの傍らで
未だに槍で獲物を追い今日明日を生きる奴らが居る。




人はもっとシンプルであるべきだ。




男は自分の生き様には絶対の自信を持っていた。
「招かれればこの格好でホワイトハウスにだって行くさ」



ターミナルの出口に向かい、チラリと後ろを覗うと
責任者らしき者が相変わらず不安そうな表情で
男を見ている。

ッス・・っと表に出る。


「ヒッスッ!・・」


外気温は零度程か。

気道から肺の中までが一気に冷気で満たされ
男のライフを奪う・・


「しかし・・」


男は呟いた。



それは男のスタイルだかろこそ感じる
地球の悲鳴だった。


タクシー乗り場に向かうと
客も少ない時間帯の動きの無いタクシーの列の
先頭の車のドアが開いた。

乗り込んだ男に振り向く運転手。

一瞬、凍りつく視線。
(厄介な客を乗せちまった)
そんなふうにでも感じたのか。
しかし、そこはプロ。直ぐに冷静を装い
「どちらまででしょうか?」
ナビを操作しながら
男に尋ねた。







「南へ向かってくれ」


漠然とした行き先に困惑しつつも
ステアリングを南へと向けた。





高速を南へ向かう車内で、運転手は
男の事が気になるのか
時たまチラリと、ルームミラー越しに視線を向けた。


「お客さん、寒くないですか?」


エアコンのパネルに手を伸ばしながら運転手が尋ねた。


「いや、むしろ・・止めてくれないか」



「え?だ、大丈夫ですか?」


「問題ない」



ミラーサングラス越しで視線は確認できないが
男の自身に満ち溢れた態度、深く眉間に刻まれた皺。
只ならぬ気配を感じ、快適な車内ながら運転手は一瞬、身震いした。
(この人は一体・・)
考え出せばキリが無いほどの不思議な客に違いなかった。

「お客さん、どちらからお帰りで?」

普段、客の素性などはあまり詮索しない運転手も
この男にだけは異常なほど興味が湧いたのだろう。
ルームミラー越しの視線に緊迫感が漲っている。


「あー・・南の方だ。」

ぶっきら棒な男の態度は
運転手を一層、緊張させた。

「お、お仕事かなにかで?」

南へ向かい高速を走る車内。
目的地も定まらず
漠然と走るこの空間を、少しでも和やかにと
精一杯の運転手のプロ根性だった。

「まあな。」



男はぼんやりと外を見ながら答えた。


「あの、差し支えなければ・・お仕事は何を?」







「そうだな・・」


少し考えて男は答えた。



「エージェントだ」


「えーじぇんと?なんですか?それって?」

お喋りでもないし、むしろ人と話すのは苦手な方だ。
何となく、男の気まぐれとでも言うか
気を使う運転手への哀れみとでも言うか
いや、タダの暇つぶしだったのかもしれない。
自身の素性や組織の話などは
外部への漏洩は重罪にあたる。
男はそんな事は充分に承知していた。


「昔は戦場にいた。今はある組織に属している」


「え!?・・」

凍りついた運転手の表情が
逆におかしくなり、からかう様なつもりで男は時差ぼけでぼんやりとした表情で、話し始めた。



「FDIと言う組織に所属している」



「え!?え、えふでぃーあい??FBIじゃないんで?・・」




「FBI?そんなものFDIの一部の組織にすぎん。」


運転手は一体何がナンだか、この客が言ってる事が
まったく理解出来ずにいた。
(まったく・・ついてねーや。こんな訳の分らん事言う
変な格好した客に当っちまうなんて・・そういや
俺の前の車、モデル風のオネーちゃん乗せてたな・・
今頃、車の中はいい匂いで一杯なんだろーな・・
にしても、一体どこいきゃいいんだ?
は~・・早く帰って温かい布団でねてーぜ・・)
しかし、既に男の世界観の中に
ドップリと引きずり込まれている事に
気が付いてはいなかった。

「その、組織は・・一体・・何の・・」

「そんな事を聞いてどうする。」

「い、いや、あの・・」

運転手の問いに男はドアに肘を掛け
頬杖をついて首を少し傾げ
視線を外に向け聞いていた。



「そ、それに・・」



運転手が少しドギマギしながら


「そ・・・その格好・・は・・何か・・」

「ん?格好がどうした?」

「いえ・・その・・何故・・フン・・」





「目に見える物だけにとらわれるな!」



今まで落ち着いた口調で話していた男が
突然、何かを遮るように声を荒げた。




「すす、すいません・・」



運転手は(ビクッ!)っとなり全身の毛穴が開くのを
感じていた。

(ま、まずいな・・この客、怒らせたら何するかどうかわかんね-しな・・
ま、まさか・・あの布で猿轡を噛まされて・・それから・・うわ~・・)
背骨の辺りを真っ直ぐに、変な汗が
ツーッっと流れていくのを感じた。


男は一転して、腕を組んで前を真っ直ぐに見据えている。
その視線はサングラスで確認できないが
相変わらずの深い眉間の皺から察するに
鋭い眼光であることは疑いようがなかった。


「人は進化の過程で文明と引き換えに色々な物を失ってきた」

再び落ち着いた口調で男が話し始めた。

「人には五感と言われる感覚がある。しかし、その感覚さえも
野生の感覚には程遠い物に退化しているに違いない。
人は昔、もっと色々な事を感じていたはずだ。
そして、人の感覚で最も退化してしまった感覚が分るか?」

運転手は変な汗をかいている。
心臓も恐ろしい勢いで血液を送り出しているのが分る。
掌もじっとりと汗ばんでいる。

「人が失ってしまった感覚・・俗に言う第六感・・
そう・・」




男は言った



「SEXセンスだ。」





「え?」


運転手は一転して凍りついた。
しかし、堂々とした男の態度に
きっと自分が間違ってるに違いない、そう思い始めていた。


「し、シックスセンスとは違うものですかね(汗)」



「・・・・」












「そーともいう・・」









「な!」





運転手は益々男の事が分らなくなっていた。
(な、ナンなんだ・・こいつ、実はタダのバカじゃねーのか?・・)





車内には静寂が戻り、男はまたぼんやりと外を眺めていた
辺りにはポツリポツリと民家が数件確認出来た。
男はある事が気になった。
(おかしいな。この辺りはまだ・・)
しかし、市街地に近い辺りを走っていても
その光景は変る雰囲気すらない。


「運転手さん、この辺はまだ上に住んでるのか?」




「え?上に住んでるってのはどうゆう事で?」






「いや・・」





「俺が留守にしてる間に、日本は地底人化したと聞いたんでな。」







「はい?」



「ち、地底人・・なんですか?誰がそんな事言ってたんですか?」


正直、度肝を抜かれた。
単純に考えれば分りそうな事を
男は真剣に尋ねてきた。


(おいおい、なんだよ~地底人って・・つか、意味わかんねーこいつ・・
ん~?地底人化→ちていじんか→チテイジンカ・・
ま、まさか・・)




運転手は恐る恐る男の質問に答えた。


「あの~・・それって、もしかしてチデジカの間違いなんじゃ?・・」






















「ふ~・・」


男は静かに深く息を吐き言った。

「そ~なの~!?」






運転手は困惑していた。
(こ、こいつ・・きっとお笑い芸人かなんかなのか?・・)


しかし、男は何事も無かったように静観している。


「ちょっと聞きたいんだが」


暫くして男がまた口を開いた。




「今、薄い本が流行っていると聞いたが?」


「え?う・・すい・・本・・です・・か・・?」






(運転手の脳内イメージ画像)


(なんだろーな・・また何かのトリックか?・・)


















「スマート本とか言うらしいぞ。」














「っぶ!」

男の発言に思わず噴出してしまった。
にしてもだ、男はいたって真面目に恐ろしいほどの
くだらない事を真剣に聞いてくる。
(いい加減にしろよ!お願いだから喋るんじゃねーよ!)


「スマート本じゃなくて、フォンですよフォン!電話!電話ですってば!」





「お~!」




「電話なら私も持ってるがな。」

男はバックの中から取り出すと
少し自慢げに運転手に見せた。


「最新機種だ傷をつけるなよ」








「えっつ・・っと」

「尿検査でもするんですか?・・」

「いや、尿検査用は目盛りが付いている。問題ない。」



「これって・・」



戸惑う運転手。






「作ってきたんですか?」



尋ねる運転手に男は







「NASAで開発された。」








 「ナサって・・NASA?」




「FDIとNASAの共同開発だ。特殊なラインを使っている。32本縒りだ。高いぞ。人がブル下がっても切れん。」



「えっと・・これ、通話?は?で、できんの??」



「通話が出来ん訳なかろう!国際通話がメインだ。」


「また~?冗談でしょ?」

「電源も充電も不要だ。エコだぞ。いざと言う時に強い。」


「しかし、欠点があってな・・」



(いや、むしろ欠点が決定的すぎて欠点とイワねーだろ!)











「受話器を相手に届けなければならぬ。」



「だよね。」

(つか、会ってんだから直接話してこいよ!)

「あ、これってメールは?出来ないじゃないですか?」



「メール?メッセージか・・その時はこいつの出番さ・・」


男は再びバックの中に手を伸ばした。
ここまで微塵も慌てる素振りなど見せなかった男が
冷静さを欠いた。



「ちょ!ばか!おとなしくしろ!」









「ポロッツポー・・」











「うっわー!ちょ!車の中で!・・」






「バサバサ!ポロッポー!」





「うっわー!」





(ギャギャギャギャ~!キキーーーー!)



あわや分離帯に激突寸前だった。


「クククク・・」

「ちょ!何がおかしいっすか!二人とも死ぬトコでしたよ!」



「二人とも?それは違うぞ」


男は自信に満ち溢れた態度で言った。



「私はこの布に守られてる。」





「え!?布?股間だけでしょ!?」



「目に見える物だけに・・」



「はいはい、セックスせんすですよね・・」


「セックス?シックスセンスだ!オマエバカか!」




「ちょ!さっきあんたが・・」




「私はこの布でハイパーシールドされている。車が壁に激突したら
あんたは冷たい棺桶行きだろうが、私は何事も無かったかのように
その場から姿を消すさ・・」

男の口元には笑みさえこぼれている。


「マイナス50度から800度の炎、戦車に踏まれてもへっちゃらだ。」


(股間は確かに大事だがそこだけ守れても・・どーなの?)


「先日もあるミッションでヒマラヤ山中で吹雪になってな。リバークせざるえなくなった。そんな時に布を解いて体に巻きつけた。」



「それだけじゃ、寒いっしょ!」



「いや、体温を42度に保ってくれる。問題ない。」




(ちょ!42度じゃ具合悪すぎだろ!死ぬ寸前じゃねーのか!?)






そんな話の最中だった。











「そこの出口だ!」




「な!」




(ギャギャギャギャーーー!キキキー!)



寸前で分離帯への衝突は避けたが
あわやのところだった。


「もっと早く言って下さいよ~!」



「ククク・・一人だけ死ぬトコだったな。こんな客早く降ろして温かい布団で寝たいだろうが、危うく冷たい棺桶でねるはめになるところだったな・・」



運転手は焦っていた。
一刻も早くこの客を降ろさねば
本当に生きて帰れない、そう思い始めていた。





そしてようやく目的地へ到着し

「お客さん着きましたよ・・」


と、後ろを振り返った瞬間、

「ッボ!」

男の手から炎が立ち昇り





その炎を打ち消すように


「パン!」





っと、男が運転手の眼前で大きく手を叩くと

運転手は虚脱状態でシートに倒れこんだ。



そうなのだ。男はこの車に乗車した時から

既にマインドコントロールで運転手を自在に操っていたのであった。

「ありがとう。おかげで楽しいドライブだった。」

料金メーターの示す金額よりも大目の代金を置き

男は薄暗い路地へと消えていった・・










運転手は途方に暮れていた。
未明から今までの記憶がまるで無いのだが
確かについ、さっきまで客を乗せて運転して来た事実が
車内の状況を見れば明らかだったからだ。


「俺は一体・・」




どうにも説明のつかない非現実感と
走行距離の割に物凄い疲労感に
「早いトコ帰って温かい布団でねてーな。まったく・・冷たい棺桶なんて
まっぴらゴメンだぜ・・」



「っは!」


運転手は朝焼けの中、北へとステアリングを向けた。

















第2章へつづく・・











 

コメントを見る