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上宮則幸

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7月26日

ヘッドランプヘッドランプヘッドランプ…
あった!

いつもはクルマのラゲッジルームに撮影用のライトと一緒に置いてある筈のゼクサスが、何故か助手席とセンターコンソールの隙間に落ちていた。
日曜の晩に息子と夏祭りを見に行った際、幼い彼が夜道で躓かないように足元を照らすつもりでバッグに入れていたのを、帰りに取りだし適当に隣に置いたのだった。
昼間遊び過ぎた彼はおれに抱っこをせがんで結局使わなかったんだっけ。

伸びっ放しの長い髪、RBBのネックガードをビーニー代わりにしてスッポリ覆い、上からゼクサスを装着した。

昨夜見た様子では、先日の雨による増水以前よりも流芯がうんと対岸に寄っている。
手前の水はトロンとして動かず、またこちら側からフルキャストしたところで美味しい流れをルアーに当てる事も出来なかった。
だから今夜はまず対岸だ。


足下からガンガンに走る流れ。
やはり向こうとは大違いだ。
流れに敏感で鉄板バイブ並みに広いリーチを持つハンドメイドルアー、カラマツ75をフルキャストしてサーチすると着水地点から20m引いた辺りで急に水を噛む。

続いてシュナイダー18に変え地形を探る。
このルアー、干潮前後の肝属河口で使い勝手が抜群にいい。
浅く流れが急な川である肝属には絶妙なウエイト設定で、ボトム付近の微妙なレンジ差がリトリーブスピード一定でもティップの上げ下げだけで容易にコントロール出来る。
今回はその特性を生かして地形のセンシングをする。
一定幅でピョンと跳ね上げては落とし、跳ね上げては落とし…
明かりの無い暗闇で足下の安全を確かめるために杖で歩前を突いて確かめるようにして脳内に3Dマッピングを進める。

やはり、カラマツで感じた流速差の筋の辺りにブレイクラインがある。
そこから手前の速い流れの中も、もちろん有望ではあるがデカいヤツが悠然と定位するであろう位置は恐らく沖のブレイクラの線上のどこかだろう。

まだト書きが書き込まれていないおれのシナリオはこうだ。
今はまだ見当たらないが、ベイトがハクであれコノシロであれ群れを成すのは恐らく向こうの淀みの中だ。
干潮前の強い流れが出た際に淀みの水もやはり動く。
その時に淀みから強い流れに吸われるようにして移動して来た彼等が流れの流速差にビビって不規則に暴れるか、もしくは泳ぎのバランスを崩した時にデカい鱸がドカン!
至って平凡でその上ディテールに乏しく、このままでは凡作の劇で終わる。
だが魚釣りは結局そんなもんだ。
実は雨前に水面を低空飛行するツバメがモンスターの裏ベイトで鳥型ルアーのライナーキャストにメーターオーバーがモンドリ打ってフライングゲットー!!!
なんてキテレツなストーリーは漫画の世界だ(笑)

今おれがいる流芯側からのアプローチは、もちろん悪くない。
水が好転すればだが、手前の流芯の中にも魚は多く差すだろうしベイトが淀みから流れに吸われる様を演出するならばこちらが正解だ。
ただし、ラインが手前の速い流れに取られて一番美味しいブレイク付近をモンスター攻略の定石通りに丁寧にゆっくり流すことは難しいだろう。

K2Rを入れてみる。
しっかり流速差の筋まで届くが、やはり手前の流れにラインが取られルアーがツツツーと、止めが効かない。
コモモはどうか?
そもそも筋まで届かないか…
食わせる手段をあれこれ試すも、思い通りには行かない。

いや、それでもちゃんと魚が差しているならばサイズは出せないにしても、流芯内で何らかの反応があっても良さそうなものだが…ノーバイト。

ゼクサスで水面を照らす。
やはりか…
水がダメだ。
向こうで昨夜見た水色とあまり変わらない。
う~ん…


いったん上がる。
仕切り直し。
干潮前に思い切って淀みの方に移動。

足下を照らしながら入水。
おや?
おやおや?
淀みの水はあの白っぽい濁りがやや取れている。
手で水面をパシャパシャ叩いても泡が水面に残らない。
昨夜は水の悪さから早々に見切り中流に行った。
今夜は明らかに水が違う。

そして淀みの地形は…
あの五月のカワヌベ戦の頃よりやや深くなっていた。
思うように前に出られない。
僅かにだが今日の潮位ではさっき見つけたブレイクラインまでルアーを届かせる事は無理。
もう少し下げる明日なら行けるだろうが…

戻る。
竿とカメラを川岸に置く。
手にはウエーディング時に撮影用一脚として使っている2.5mのポールだけを持つ。
ポールでボトムを突きながら歩き探索する。
覚悟を決め、ウエーダー内に水を浸水させ爪先まで完全に空気を抜く。
そして淀みの中を首まで浸かり歩き回る。

昔からおれは鈍臭いヤツで、もう何十年やって来てるから多少は水面を見てそのヨレ具合で地形や流れも読めつもりではいるんだが、実際こんな風に直に足で確かめなくちゃ気が済まないし、気が乗らないし、自信が持てない。
人様の釣果情報も端から全く聞きはない。
同じ技術もセンスも残念ながらおれには無い。
おれのやり方感じ方で、泥臭い仕事しか出来ないんだ。

ポールで砂を突いて、ボトムの柔らかい場所硬い場所を見分ける。
ウエーダーに僅かに受ける流れを感じ、次の一歩を占い、杖で探っては慎重に進む。
やがて砂が硬く締まった少しだけ深い帯状の地形がイメージ出来てきた。
僅か5cm程の深さの違いだが、この差は非常に重要だ。
ユルユルな流れのこの淀みの中の水が強く潮が走った時に吸われるチャンネルだ。
漸くヒントが見えて来た。

そして視線をチャンネルの延長線上と沖のブレイクラインがクロスする場所に向ける。
息を飲み暫くその一点を睨むように見つめる。
するとその一点に名状し難い特別な何かを感じ始めた。
確信めいたものが心に形を成し始め身震いがする。


おれの撃つべき定点が、張り付いて離れられない定点が、泥臭い苦労の末に目の前に現れた。

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