太陽が既にだいぶ傾き、背後の崖の向こうに見えなくなってしまった。
仕事が終わった夕方の磯にワンチャンスを拾いに来た。
既に４日チェイスのみで、フックアップには至っていない。

今日こそは…

ターゲットはブリの群れ。
先日まで釣れていた腹パンパンではなく、痩せた個体。
毎日必ず日没のタイミングに１度だけチャンスがある。
この時合いを見付けた初日と翌日は連続バイトの末にナイスサイズをものにしたが、その後は次第にルアーを見切り始め、ガッツリ乗せるまでには至らない。

バカの一つ覚えのダイペンを暫く通した後、先日届いたばかり、秋発売予定のBlueBlueバシュートを結んだ。
ベイトキャスターのおれにとっても、こいつは不安なくフルキャストできるルアーだと言うのは、前日台風の影響が濃い状況でのキャストでも動じないスタビリティーを確認していたから自信満々で113H protoをしならせジリオンを唸らせた。

磯際の影のラインを抜けたバシュートのホログラムのボディーがまだ微かに残る陽光を反射したが、更にバシュートは飛距離を伸ばし続け、ジリオンに八分目まで巻かれたレジンシェラーを全て出し尽くしてカクンと着水した。

穂先を上げて、表層を意識しワンピッチでバシュートをシャクり巻く。
70m程巻き、穂先を下げようとした時、眼前40m程の海面が不自然に揺れるのを見た。
それは正にバシュートが泳ぐ辺り。
そして水面が爆ぜた。
ワンテンポ置いて113がバットまで絞り込まれた！

アワセをくれてやる。
巻きながらの2回。
そして、やや緩めのドラグを１回転締め上げ、３度目のアワセを入れた時だった。
正に、『スカッ』と言う表現が相応しいだろう、レジンシェラーは緩み113は弾け上がった。
おれはバランスを崩して右の膝と右の掌を足下に着いた。
慌て立ち上がりリールを巻きラインを手繰るも時既に遅し。

もちろん諦めずに、バイトがあった場所に間髪入れずに投擲し、同じよにシャクる…
辺りが藍色に染まりかけるも、再び113は曲がらなかった。

諦めてしゃがみこむ



ん？



さっきバランスを崩した時！





これだ。

ソルトゲーターは無残にも亀の手に破かれてしまったが、おれ自身には傷一つ無い。
磯での負傷はタチが悪い。
非常に不衛生なんだ。
ちっちゃな傷口でも、負傷したそばからボッコリ腫れ上がる事も少なくはないし、その傷はなかなか治らない。

何度も痛い目に遭ってるから、このソルトゲーターってアイテムの有り難さはよく理解できるよ。
着けてると暑いって？
いやいや、濡らして履けば履かないより随分涼しいんだ。
正直、山道を長々歩く時は少々邪魔臭く感じるが、転けて痛い目に遭う事を考えれば我慢できる。

１回でも磯上で痛い目に遭った事があるなら、試してみてはどうでしょうか？
転けた事無い？
今後も絶対転けない？

NO WAY !









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