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上宮則幸

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生き物は食べる

  • ジャンル:日記/一般
行くよ!
事務所の玄関からおれは顔も見ないで声をかけた。
奥から歳上の相棒が「お!」。

エアコンが壊れた軽トラの荷台の工具を確認した後、おれは助手席へ。
座ると即座に手動で窓を開けた。
歳上の相棒が巨体を揺すり運転席のドアノブに手を掛けたと同時に、彼の携帯の着信音(巨体の彼からは想像出来ない可愛いメロディー)が鳴る。
座りながら電話に出る。

スピーカーモードにもしていないのにはっきりと聞こえる声は○○不動産屋のしゃっちょーさん。
キンキン声のお陰で会話が全て理解出来た。
何度かキンキン声が女性の名前を言うのが聞こえた。

「いくらだ?」
電波の向こうからの問い掛け。
相棒がチラリとこっちを見た。
おれは指を一本立てた。
「弐萬です。」
スマホから聞こえる声のトーンがまた上がった。
ご機嫌を損なったようだ。
ボリ過ぎ、壱萬にしなよ、それでも随分吹っ掛けてるぜ!
横から言うおれを左手で制して、適当なおべんちゃらを彼は言った。


予定変更。
荷台にトイレズッポンを投げ込み急行。

の○みちゃんて?おれが聞いた。
「ふっ(笑)、あいつのコレ!」
ふ~ん…と返事したが、あいつの歳でアレが役に立つとは思えないから、どうやってナニしてるのか?想像しながら、の○みちゃんのマンションへ。

ドアの向こうの、の○みちゃんを含む風景は、最終的に軽トラの助手席でおれが想像した通りであった。
玄関の靴箱の上には、中身がピンク色の砂時計があるところまで、まんまイメージ通り。
まさに愛人の部屋。
の○みちゃんがノーブラでノースリーブなのも…

相棒がトイレズッポンを突っ込む。
巨体が力強く肩を揺すったかと思うと、すぐにその汚ない小部屋から出てきた。
おれはビニール手袋を着けた手にバケツを持って小部屋に入り、直視に堪えないカオスに両手を突っ込み、ソレを掬ってバケツに入れた。
「おみやげのたこ焼き食べ過ぎちゃって吐いちゃったの」
の○みちゃんの可愛い言い訳。
声はアルコールとカラオケでカスレ気味。



作業を終えると、コーヒーが。
何も飲み食いしたくないが我慢して…

「今度お店に来てね」と、ノーブラにノースリーブが名刺を差し出した後にハダカの弐萬円が。
何故か相棒も手のひらを差し出しニヤニヤ。
その上に漱石さんが1枚乗せられた。

帰り際にこれはいいからと言って諭吉を1枚返し、軽トラの助手席に乗り込む。
相棒に向けて今度はおれが手のひらを差し出す。
シワクチャの漱石を舌打ちと一緒に受け取り丁寧に封筒に収める。




本来の現場に向かう。
バールを振るってプラスターを砕き、床に膝を付きそれをかき集め軽トラの荷台に…を繰り返す。
顎を伝ってボタボタと汗が滴り、埃だらけの床に染みを作る。

急に、窓の外で蝉が狂ったように鳴き、バタバタと羽を震わせる音が。
カマキリがアブラゼミを捕らえたんだ。

暫くそれを眺めているとやがて蝉は鳴くのもモガクのも止め、ただもどかしく足を動かすのみになった。
ピタリと身体を静止させたカマキリが、顎だけをせわしなく動かして蝉を食う。

おれも稼がなきゃ、食わなきゃ。



不意に、脳裏にあのデッカい鱸の姿が浮かんだ。
110は余裕で超えていたに違いない。

ツマンナイ場所の筈だが…
ヤツは真っ昼間にノッペリとした何も無いシャロー帯と流芯とのブレイクを彷徨いていたんだ、食べるものを探して。

こんな場所で?

あまりにも身も蓋もなく、あからさまな光景に圧倒されたあの日の、デッカい『?』に対する仮説を立てるには今は時間が無さ過ぎる。
今夜もビールの肴はコレだ。
今夜まで家で考えたら、明日からフィールドで答えを探す。


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フイクションだから(笑)




























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