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歌 -うた-

  • ジャンル:日記/一般

 目覚ましのアラームが鳴り止むとしばらくして、台所からコンロの火をかける音が聞こえてくる。


僕は目を閉じたまま、その一連の動作を想像する。


ついさっき始まった夢の続きを見るか、慌ただしい朝を迎える現実を見るか。


夜勤の疲れを纏った身体は布団を押し付ける重石となり、そのまま1日の始まりをやり過ごすことを選択した。




 空を読み、風を読み、潮を読む…とは名ばかりで、手の中に収まる情報をもとに思考を巡らす。


過去を手放し未来を託した道具たちは、時に曲がり、時に鳴り響く。


フィールドに存在する宝箱をひとつずつ開けて、その中身を確認していく。


それだけで十分にも関わらず、その先の何かを見ようと、夢中でロッドを振り続ける。




 バルサに輪郭を描き、情景と感情を文字に変換し、ひとつずつを形にしていく。


それら作品は、手を離すとシャボン玉のように風に吹かれながら飛んでいく、ということにいつしか気付いた。


ある時は空高く見えなくなるまで舞い上がり、ある時は途中で弾けるようにパッと消え、あるいは無邪気な笑顔の子供たちによって破壊される。


僕はその結末を、自ら選ぼうとはしない。


選ぶなんて愚の骨頂だ。


作品が作り手のモノであるうちは、他人はそれを手に取ることはできない。


手を離すことで、はじめて作品は輝く。




 歌を作り、歌を歌い、いつしか誰かに届いたならば。


曲は相槌も打たなければその手段も持たないのに、まるで身体の一部のように寄り添うのは、聞き手がそう捉えるから。


受容された思いは、その人だけのさらなるストーリーを創るだろう。


だから僕は、作ったルアーを誰かに渡す時、ルアーについて特に何も言わない。




歌を作り、歌を歌う。


すべてが歌に。


すべてを歌に。


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